
コラム
CIMとは?建設業への導入方法やメリット・デメリット、おすすめソフトを紹介

建設業界でも3D技術の活用が広がっています。その中でも注目されているのがCIM(Construction Information Modeling/Management)です。
本記事では、CIMの基本的な概念から導入方法、メリット・デメリットまで詳しく解説します。これから導入を検討している企業の方はぜひ参考にしてください。
CIMとは

まずは、CIMについて解説します。
定義
CIMとは、Construction Information Modeling/Managementの略称で、2012年に国土交通省が提言した建設業務の効率化を目的とする取り組みです。3次元モデルを主体とする情報を関係者間で共有し、建設生産システムを高度で効率的なものにすることを目指しています。当初はModelingのみでしたが、試行過程でManagementの重要性が認識され、現在はその両方を意味しています。
主な目的
CIMの主な目的は建設業における生産性向上です。
設計から施工、維持管理に至るまでの一連のプロセスで3次元モデルを活用し、情報を一元管理することで業務効率化を図ります。特に情報の可視化による合意形成の迅速化や、フロントローディング(前工程での集中的な検討による後工程の負荷軽減)によって、手戻りを減らし全体的な生産性向上を実現します。
BIMとの違い
BIM(Building Information Modeling)とCIMの違いは、対象とする情報の範囲にあります。
BIMは建築物(Building)の情報を活用するモデリングであるのに対し、CIMは建設(Construction)の情報を活用します。建築は家などを建てること自体を指し、建設は設計・施工・維持管理までの一連の流れ全体を指します。近年では両者を統合した「BIM/CIM」という呼び方も増えています。
CIMを建設業に導入する背景とは

建設業界は深刻な人材不足に直面しており、生産性向上が喫緊の課題となっています。また国土交通省は2025年までに公共工事でのBIM/CIM原則適用を目標としており、業界全体のデジタル化が急速に進んでいます。CIMはこうした課題に対応するための重要なツールとして、多くの建設企業が導入を進めています。
CIMを建設業に導入する背景について解説します。
人材不足の解消
建設業界では高齢化や若手人材の不足が深刻な問題となっています。CIMを導入することで作業の効率化や自動化が進み、少ない人員でも質の高い業務が可能になります。また、3次元モデルによる直感的な理解は若手技術者の教育にも効果的で、技術の継承や人材育成の課題解決にも貢献します。熟練技術者の経験や知見を3次元モデルに組み込むことで、技術力の維持向上も図れるでしょう。
デジタル化・IT化への対応
国土交通省はBIM/CIMの推進を積極的に行っており、2025年までに小規模を除く全ての公共工事でBIM/CIMの原則適用を目標としています。
建設業界のデジタル変革に対応するため、建設企業各社もCIM導入を急いでいます。3次元モデルの活用は施工計画の高度化だけでなく、データ駆動型の建設業への転換という大きな流れの一部でもあります。
CIMを建設業に導入するメリットとは

3Dモデルを活用することで、プロジェクトの可視化、関係者間の情報共有の効率化、作業フローの最適化、維持管理の合理化など多くの効果が期待できます。特に複雑な構造物の設計や施工においては、事前に問題を発見して解決できるため、手戻りの減少によるコスト削減や工期短縮につながります。
CIMを建設業に導入するメリットについて解説します。
デザインや構築物の完成が可視化される
CIMの最大のメリットは3Dモデルによる完成形の可視化です。
施工対象物の構造や完成までの手順、周辺環境との干渉などが具体的に表示されるため、関係者全員が同じイメージを共有できます。これにより認識のズレによる手戻りが減少し、より精度の高い計画立案が可能になります。また専門家だけでなく施主や地域住民など専門知識がない人たちへの説明にも効果的です。
内部や専門機関との情報共有が効率化できる
CIMでは設計情報が3Dモデルとして一元管理されるため、関係部門や協力会社との情報共有が容易になります。
従来の2D図面では個々に完成形をイメージする必要がありましたが、CIMでは具体的に可視化された3Dモデルを用いるため、専門知識の有無を問わず同じ情報を共有できます。これにより合意形成のスピードが向上し、プロジェクト全体の進行も円滑になります。
作業フローが効率化できる
設計段階でCIMを活用することで、施工段階での不具合や干渉を事前に発見し、修正できます。また設計情報を基に関連資料作成が効率化されるほか、3Dモデルから数量算出を自動化することも可能です。さらに施工段階においても、複雑な工程の可視化や安全教育での活用、設計変更時の迅速な対応など、様々な場面で作業の効率化を図ることができます。
構築物の維持管理もしやすくなる
CIMでは測量データなどを一括管理して関係者間で共有・活用しますが、この仕組みは維持管理段階でも活かされます。構造物のモデルを直感的に検索できるため、完成後も必要な情報をすぐに取り出して活用できます。点検記録や補修履歴などの情報も3Dモデルに紐づけて管理することで、効率的な維持管理が可能になり、ライフサイクルコスト全体の最適化につながります。
CIMを建設業に導入するデメリットとは

導入時には技術者の育成やシステム構築など一定の投資が必要となります。また地形モデル作成における測量手法の選択や、データ共有時の互換性の問題など、運用面での課題も存在します。これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることが、CIM導入を成功させるために重要です。
CIMを建設業に導入するデメリットについて解説します。
CIMの技術者や運用者を教育する必要がある
CIMを効果的に活用するには、専用のコンピューターツールやシステムを使いこなせる人材が必要になります。しかし、そのような技術者の育成には時間とコストがかかるため、現状では不足状態にあります。
また、システムを使用するためのマニュアル整備も必要で、データ形式の互換性の問題から業者間・部門間でのデータのやり取りが難しくなる場合もあります。導入初期には特に人材教育の負担が大きくなります。
一定の費用がかかる
CIM導入には専用ソフトウェアの購入やシステム構築など、相応の初期投資が必要です。さらに導入後も運用コストがかかり続けます。特に生産に関わる情報が多い場合、必要な情報や設計が完了するまでに時間がかかることがあり、素早い意思決定が求められる現場では時間的なコストも発生します。導入効果が表れるまでには一定期間を要することも考慮する必要があります。
地形や地理的な条件に強く影響されてしまう
地形モデルの作成には面的に3次元計測する測量手法を用いますが、地理的条件によって適切な手法が異なります。不適切な手法を選択すると、現実とモデルの間に相違が生じ、計画の精度に影響します。また、複雑な地形や既存構造物が多い場所では、モデル作成自体の難易度が上がり、時間と労力が増大することがあります。地理的条件を適切に把握し、それに適した測量手法を選択することが重要です。
CIMを建設業に導入する方法とは

成功するCIM導入には段階的なアプローチが重要です。まず導入目的を明確にし、現状の課題を分析します。次に具体的な運用計画を策定し、必要なツールを選定します。そして小規模なプロジェクトから始めて徐々に適用範囲を広げていくことで、リスクを抑えながら効果的な導入が可能になります。
CIMを建設業に導入する方法について解説します。
導入目的の明確化
CIM導入の第一歩は目的設定です。
「なぜCIMを導入するのか」という理由を明確にしましょう。未経験分野への参入や過去の経験から懸念される問題点の解決など、業務改善に関する具体的な目標を設定することが重要です。導入の検討に際しては、CIMによって建設業務内の何を改善したいのかを明確にし、その効果を測定する指標も併せて検討しておくことをおすすめします。
現状課題の把握と分析
目的設定が完了したら、達成するために必要な情報を現状の把握・分析を通じて洗い出します。
各情報の用途に沿ったデータの出し入れを想定し、必要なモデル形状・属性情報・共有基盤などを特定します。さらに、達成に必要な情報の加工方法や活用方法についても検討します。データフローを想定することで、必要なハードウェアやソフトウェア、人員配置などを明確にしておきましょう。
運用計画やフローの作成
データフローに基づいて具体的な運用計画を作成します。
誰がどのデータをいつ作成し、どのように加工して、どのように活用するのかというワークフローを定義します。また、モデル作成の詳細度や属性情報の入力ルールなど、運用上のルールも整備しておきましょう。実行前にできる限り運用計画を詳細に決めておくことで、導入後の混乱を最小限に抑えることが可能です。
関連ツールの導入・活用
想定した運用を実現するために必要なツールを選定・導入します。
既存のソフトウェアやサービスから、目的に合ったものを選びましょう。必要な機能が揃っているか、コスト面との兼ね合いなども考慮して選定します。既存ツールでは対応できない場合は、カスタム開発も検討します。複数のツールを連携させる場合は、データ連携の仕組みも事前に確認しておくことが重要です。
CIMの導入・運用開始
準備が整ったらCIMの運用を開始します。実際に使用してみると想定と異なる点が出てくることが多いため、柔軟に対応しながら最適化を図りましょう。初期段階では小規模なプロジェクトから始め、徐々に範囲を広げていくアプローチも有効です。また、定期的に効果を測定・評価し、必要に応じて運用方法やツールを見直すPDCAサイクルを回すことで、より効果的なCIM活用が可能になります。
建設業で導入すべきおすすめCIM対応ソフト3選

建設業で導入すべきおすすめCIM対応ソフトを紹介します。CIM対応ソフトは目的や用途によって選ぶべきものが異なります。3D CAD Studioは汎用的なモデリングに、Civil 3Dは地形モデルや線形設計に、V-nasClairは操作性と国産ソフトならではのサポートに強みがあります。自社の目的や予算に合わせて最適なソフトを選ぶことが重要です。
3D CAD Studio
3D CAD Studioは、CIMにおける3Dモデルの作成をサポートするために開発された連携ツールです。
3次元のデータ表現が強化されており、作成した3Dモデルを様々な製品とデータ連携することができます。シンプルな操作性と高い互換性が特徴で、CIM初心者でも扱いやすいソフトウェアとなっています。特に建設分野で必要とされる汎用的なモデリング機能を備えており、幅広い用途に対応可能です。
Civil3D
Autodesk社のCivil 3Dは、土木設計に特化した3D CADソフトです。
国土地理院の基盤地図情報や点群データなどから3次元地形モデル(サーフェス)を作成し、解析する機能に優れています。道路などの線形構造物の設計も得意で、任意の平面線形から縦断図を自動生成したり、土量算出を効率化したりできます。大容量の地形データを扱えることも特徴で、広範囲のプロジェクトにも対応可能です。
V-nasClair
川田テクノシステム社のV-nasClairは、2次元の汎用コマンドを全て包括した上で、豊富な3Dモデル作成機能を搭載した国産のCIM対応ソフトです。
出力機能も標準搭載されており、CSVファイルの読み込みによる簡単なモデリングや、スクリプトでのユーザーカスタマイズも可能です。特に断面からスイープするだけでTINサーフェスとソリッドモデルを同時作成できる機能は、作業効率を大幅に向上させます。
まとめ
CIMは建設業界における3次元モデル活用の取り組みとして、設計・施工・維持管理までの生産性向上に貢献しています。可視化による合意形成の円滑化や情報共有の効率化などのメリットがある一方、技術者教育や初期投資などの課題もあります。国土交通省の2025年BIM/CIM原則適用に向け、目的を明確にした段階的導入が重要です。