
コラム
2級土木施工管理技士ガイド|メリットや仕事内容、試験概要と対策など

土木工事の現場で主任技術者として活躍できる「2級土木施工管理技士」という資格があります。この国家資格は土木工事の品質確保や安全管理を担う重要な証明であり、建設業界での評価も高いものです。
本記事では試験概要から仕事内容、取得するメリット、効果的な勉強法まで、これから資格取得を目指す方に役立つ情報を網羅的にお届けします。
2級土木施工管理技士とは

土木工事の現場において、品質確保や安全管理を担う国家資格が土木施工管理技士です。2級土木施工管理技士は「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の3種類に分かれており、合格すると各分野の「主任技術者」として施工管理を行う資格が得られます。1級土木施工管理技士とは異なり監理技術者にはなれませんが、中小規模の工事現場を任されるプロフェッショナルとして広く認められています。
土木施工管理技士は国土交通大臣認定の国家資格で、土木工事の施工管理を行うプロフェッショナルです。2級土木施工管理技士は「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の3種類に分かれており、それぞれの分野で主任技術者として施工管理を担当できます。小規模から中規模の土木工事現場において、品質・安全・工程などを管理するための重要な資格として広く認められています。
2級土木施工管理技士の仕事内容

2級土木施工管理技士がどのような業務を担当するのか、具体的な仕事内容について解説します。施工計画の立案から品質管理、安全管理、コスト管理まで多岐にわたる責任ある業務について詳しく見ていきましょう。
施工計画・工程管理
2級土木施工管理技士は現場での工事の進行計画を立案し、実際の進捗状況を管理します。具体的には、工事の全体スケジュールの作成、日々の作業内容の決定、作業員の配置計画の立案などを行います。また、工事が予定通りに進んでいるかを常に確認し、遅れが生じた場合には対策を講じて全体の工期に影響が出ないよう調整します。天候不良や資材の納入遅延などの不測の事態にも臨機応変に対応する能力が求められます。
品質管理
工事が設計図書や仕様書の規定に従って行われているか確認し、完成物の品質を保証するのも重要な業務です。現場で使用される材料の品質確認、施工中の検査、完成後の検査などを行います。コンクリートの強度試験、土の締固め度の確認、構造物の寸法確認など具体的な品質管理業務を実施し、記録として残します。発注者の要求に応じた品質を確保するために、細心の注意を払って管理業務を遂行します。
安全管理
現場で働く作業員の安全を確保するため、安全対策の計画と実施を行います。具体的には、安全教育や日々の安全ミーティングの実施、危険箇所の特定と対策、適切な保護具の着用指導などが含まれます。また、周辺住民や通行人などの第三者の安全確保も重要な責務です。事故発生時の対応方法についても事前に計画を立て、万が一の場合に迅速に対応できるよう準備します。
コスト管理
予算内で工事を完成させるために、資材や人件費などのコスト管理も行います。資材の発注量や使用状況を常に把握し、無駄な支出を抑えます。また、追加工事や設計変更が発生した場合には、それに伴うコスト増加を適切に見積もり、発注者と協議します。現場作業の効率化や代替工法の検討なども含め、予算管理と工事の品質・工期のバランスを取りながら進めていくことが求められます。
2級土木施工管理技士になるメリット

2級土木施工管理技士の資格を取得することで得られる具体的なメリットについて解説します。主任技術者として認められることの意義や、1級へのステップアップがしやすくなる点など、キャリア形成上の利点を詳しく見ていきます。
主任技術者になれる
2級土木施工管理技士の資格を取得すると、建設業法で定められた主任技術者として認められるようになります。
主任技術者は各建設現場に配置することが法律で義務付けられているため、この資格保有者は企業から高い需要があります。主任技術者として公共工事や民間工事の現場を任せられることで、より責任ある立場で仕事に取り組むことができ、自身のキャリア形成において大きな前進となります。また、資格手当が支給される企業も多く、収入面でのメリットも期待できます。
1級土木施工管理技士にチャレンジしやすくなる
2級土木施工管理技士の資格を取得すると、1級土木施工管理技士への道が開けやすくなります。
以前は2級合格後も5年以上の実務経験が必要でしたが、令和3年度からの制度改正により、2級の第二次検定合格者であれば実務経験の有無に関わらず1級の第一次検定に挑戦できるようになりました。これにより、キャリアアップへの時間が短縮され、より早く高度な資格を取得することが可能になります。1級を取得すれば監理技術者として大規模な工事も担当できるようになり、さらなる活躍の場が広がります。
2級土木施工管理技士の転職先

2級土木施工管理技士の資格を持つことで広がる転職先や活躍できる分野について解説します。道路会社や建設会社はもちろん、官公庁や設計コンサルタントなど、様々な業種での需要と具体的な仕事内容を紹介します。
道路会社
道路建設やメンテナンスを行う会社は、2級土木施工管理技士の知識と技術を活かせる代表的な職場です。
新規道路の建設はもちろん、既存道路の舗装補修、橋梁の点検・補修、災害後の復旧工事など多様な業務があります。特に高速道路会社やその関連企業では、安全で快適な道路環境を維持するために施工管理技士の需要が高く、社会インフラを支える重要な役割を担うことができます。また、舗装施工管理技術者の資格や重機の免許なども併せて取得すると、より専門性を高められ転職市場での評価も上がります。
建設会社・ゼネコン
建設会社やゼネコンでは、道路、橋梁、トンネル、ダムなど様々な土木構造物の建設に携わることが可能です。
2級土木施工管理技士は中小規模の工事における主任技術者として活躍できるため、地方の建設会社から大手ゼネコンまで幅広い選択肢があります。特に地域密着型の建設会社では、地元のインフラ整備や防災工事など、地域社会に直接貢献できる仕事に携わる機会が多くあります。また、ゼネコンでは体系的な教育制度が整っていることも多く、キャリアアップの道筋が明確である点も魅力です。
官公庁・公共事業関連
国や地方自治体の土木部門、また公共事業を担当する外郭団体などでも2級土木施工管理技士の資格は高く評価されます。
これらの機関では、公共工事の発注者側として工事の監督や検査を行う業務に従事できます。民間企業とは異なる視点から施工管理の知識を活かせるほか、長期的な視野で地域の発展に貢献できる点が特徴です。また、公務員としての安定した雇用条件も魅力の一つです。災害時には復旧・復興の最前線で重要な役割を担うことになります。
設計コンサルタント
土木設計を行うコンサルタント会社では、施工経験を持つ2級土木施工管理技士の知識が貴重です。
設計段階から施工性を考慮することで、より実現可能で効率的な計画を立案できるからです。施工管理の経験を活かして、現場で起こりうる問題を事前に予測し、設計に反映させる役割を担います。また、発注者支援業務として、施工中の監理業務を行うケースもあります。デスクワークが中心となるため、体力的な負担が少なく、長く働き続けられる環境である点も魅力です。
2級土木施工管理技士の試験情報

2級土木施工管理技士の資格を取得するには、国家試験に合格する必要があります。試験は第一次検定と第二次検定の2段階で構成され、両方に合格することで資格を得られます。令和3年からは試験制度が改正され、第一次検定に合格するだけでも「技士補」の資格が得られるようになりました。
ここでは試験の受付期間や日程、試験地、受験資格、試験内容など、受験に必要な情報を詳しく解説します。
施工管理技士試験制度の改正
令和3年に施工管理技士の試験制度が大きく改正されました。
従来の「学科試験」と「実地試験」という区分から、「第一次検定」と「第二次検定」に名称が変更されました。また、第一次検定に合格した時点で「技士補」の資格が得られるようになり、段階的なキャリアパスが明確になりました。さらに、第一次検定では従来の学科試験で問われた知識問題に加え、実地試験で求められていた能力問題の一部が加わりました。より実務に即した知識と能力が問われるようになり、資格の実践的価値が高まっています。
受付期間
2級土木施工管理技術検定の申込受付は年2回実施されています。
第一次検定(前期)の受付は例年3月初旬から中旬まで、第一次検定(後期)・第二次検定の受付は7月上旬から中旬までです。申込方法は個人別の書面申込が基本ですが、再受検者はインターネット申込も可能です。なお、申込締切日の消印が有効となるため、余裕を持った申込が推奨されます。申込用紙は指定の販売期間中に購入する必要があり、第一次検定(前期)用は2月中旬から3月中旬まで、その他の区分用は6月中旬から7月中旬までの期間で販売されています。
試験日程
試験実施日は例年、第一次検定(前期)が6月上旬、第一次検定(後期)と第二次検定が10月下旬に設定されています。合格発表は、第一次検定(前期)が7月上旬、第一次検定(後期)が11月下旬、第二次検定が翌年2月上旬となっています。なお、第一次検定と第二次検定を同日に受験することも可能で、この場合の合格発表は第一次検定が11月下旬、第二次検定が翌年2月上旬に別々に行われます。
試験日や合格発表日は年度によって若干変動することがあるため、最新情報を確認することが重要です。
試験地
第一次検定(前期)は全国10地区(札幌、仙台、東京、新潟、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、那覇)で実施されます。第一次検定(後期)および第二次検定は全国19〜20地区で実施され、より広範囲での受験が可能です。ただし、鋼構造物塗装と薬液注入の種別については、札幌、東京、大阪、福岡の4地区のみでの実施。試験地は住所地や勤務地に関係なく選択できますが、試験地によっては定員に達して希望通りにならない場合もあるため、早めの申込がおすすめです。なお、試験会場の詳細は受験票で通知されます。
受験資格
第一次検定は17歳以上であれば受験可能ですが、第二次検定には学歴と実務経験の条件があります。例えば、指定学科卒業の大学卒業者は1年以上、高校卒業者は3年以上の実務経験が必要です。また、指定学科以外の場合は、大学卒で1年6ヶ月以上、高校卒で4年6ヶ月以上の実務経験が求められます。その他の学歴(中学卒業など)の場合は8年以上の実務経験が必要です。
なお、令和3年度からの制度改正により、第一次検定合格者には「技士補」の称号が与えられるようになりました。これにより、実務経験を積みながら段階的にキャリアアップできる仕組みが整いました。
受験手数料
2級土木施工管理技術検定の受験手数料は、第一次検定・第二次検定(同日試験)で10,500円、第一次検定のみで5,250円、第二次検定のみで5,250円となっています。支払方法は申込方法によって異なり、書面申込の場合は申込用紙購入時に受験手数料も含めて支払います。インターネット申込の場合はクレジットカード払いやコンビニ払いが選択可能です。なお、一度納付された受験手数料は、試験を受けなかった場合でも返金されないため注意が必要です。また、申込用紙は1部600円で、インターネット申込の場合は不要です。
試験内容
令和3年度からの改正で試験内容も変更されました。第一次検定はマークシート方式で、土木一般、専門土木、法規、共通工学・施工管理、施工管理法(基礎的な能力)の5分野から全61問中40問に解答します。合格ラインは60%以上の正解(24問以上)です。第二次検定は記述式で、施工経験記述・土工・コンクリート・安全管理・品質管理の5問(必須)と、施工管理法4問中2問(選択)に解答します。こちらも合格ラインは60%以上の正解が必要です。特に第二次検定では文章記述や計算問題が多いため、記述式の回答練習が重要になります。
難易度・合格率
2級土木施工管理技術検定の難易度は、第一次検定と第二次検定で異なります。第一次検定の合格率は平均65%前後で、しっかり勉強すれば合格できる難易度です。特に令和3年度は72.5%と高い合格率でした。一方、第二次検定は記述式問題が多いこともあり、合格率は約40%と第一次検定より低くなっています。
過去の合格率を見ると、令和元年度から令和4年度まで、第一次検定は64%〜72.5%、第二次検定は37.9%〜43.9%の範囲で推移しています。技術検定全体の難易度としては中程度と言え、適切な対策と学習により十分合格可能な資格試験です。
出典:全国建設研修センター「2級土木施工管理技術検定」
2級土木施工管理技士試験の対策

2級土木施工管理技士の試験合格に向けては、効果的な勉強方法を知ることが重要です。第一次検定と第二次検定ではそれぞれ試験形式が異なるため、対策も変える必要があります。
ここでは独学でも効率よく学習を進めるためのポイントや、おすすめの参考書、効果的な学習方法などを詳しく紹介します。計画的に学習を進めて、確実な合格を目指しましょう。
独学での勉強方法
独学で2級土木施工管理技士試験に挑戦する場合、まずは明確な学習計画を立てることが重要です。試験本番までの期間を考慮し、平日と休日で実現可能な学習時間を設定しましょう。過去問題集を活用して出題傾向を把握し、苦手分野を重点的に学習することが効率的です。問題を解く際は答えだけでなく解説もしっかり読み込み、理解を深めることが大切です。第一次検定対策ではマークシート形式の問題に慣れ、第二次検定対策では記述式問題の練習を重ねましょう。
スマホアプリなどを使ったすきま時間の学習も効果的で、日々の積み重ねが合格への近道となります。
おすすめの参考書
2級土木施工管理技士試験の勉強に役立つ参考書は数多く出版されています。初学者には基礎知識をわかりやすく解説した入門書がおすすめです。過去問題集は必須アイテムで、過去5年分程度を解くことで出題傾向を把握できます。解説が詳しいものを選ぶと理解が深まります。また、施工管理の実務に即した内容の技術書も役立ちます。第二次検定対策には記述式問題の解答例が豊富な参考書が効果的です。書店やインターネットで最新版を確認し、自分の学習スタイルに合ったものを選びましょう。
なお、試験制度が改正された令和3年度以降の参考書を選ぶことで、最新の出題傾向に対応できます。
効率的な学習のポイント
効率的に合格を目指すには、まず試験の全体像を把握することが大切です。シラバスや過去問を確認し、各分野の配点や出題頻度を理解しましょう。限られた時間で効果を上げるため、高配点・高頻出の分野から優先的に学習するのが効率的です。
また、暗記だけでなく理解を重視した学習を心がけ、「なぜそうなるのか」を考えながら勉強しましょう。第二次検定の記述問題は、キーワードを押さえた解答練習が効果的です。さらに、仕事で使う知識と試験で問われる知識を結びつけて考えると、実務にも役立ちながら試験対策ができます。モチベーション維持のため、小さな目標を設定して達成感を味わうことも重要です。
まとめ
2級土木施工管理技士は土木工事現場での主任技術者になれる価値ある国家資格です。第一次検定と第二次検定の両方に合格する必要がありますが、計画的な学習で十分達成可能です。資格取得により主任技術者として活躍でき、1級への道も開けます。建設業界でのキャリアアップを目指す方にとって、大きな一歩となる資格といえるでしょう。