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建設業の人材育成方法とは?現状や課題を把握しポイントを押さえて取り組もう

建設業の人材育成方法とは?現状や課題を把握しポイントを押さえて取り組もう

建設業界では深刻な人手不足と就業者の高齢化が進んでいます。経験豊富な技術者の大量退職を控える中、若手人材の育成は企業存続に関わる重要課題です。

本記事では、建設業界の現状と課題を整理し、効果的な人材育成方法や活用できる研修サービス、助成金制度について詳しく解説します。

建設業の現状と課題
建設業の現状と課題

建設業界はさまざまな構造的問題を抱えており、人材育成が困難になっています。深刻な人手不足や高齢化、長時間労働などの課題を理解し、根本的な解決策を検討することが重要です。現状を正しく把握することで、効果的な人材育成戦略を立てられます。

人手不足

建設業界の就業者数は1997年の685万人をピークに減少し続け、2022年には479万人まで落ち込んでいます。ピーク時と比較して200万人以上の減少は深刻な状況です。

人手不足の主な要因

  • 他産業と比較して労働環境が良くない傾向
  • 年間340時間以上の長時間労働
  • 土曜日や祝日も出勤するケースが多い
  • 少子高齢化の進行
  • 3K(きつい・きたない・きけん)のイメージ

少子高齢化の進行も相まって、今後さらに人手不足が加速する可能性があります。

出典:建設業デジタルハンドブック

若年層の減少と高齢化

建設技能労働者のうち60歳以上の高齢者が約77.6万人(全体の25.7%)を占める一方、15歳〜29歳の若年層は約35.3万人(全体の11.7%)にとどまっています。10年後には高齢労働者の大量退職が見込まれるため、若年層の確保と育成が急務です。このままでは技術継承が困難になり、業界全体の技術力低下が懸念されます。

 

出典:厚生労働省「建設業の人材確保・育成に向けて(令和6年度予算概算要求の概要)」

技術や知識継承問題

建設業界では「背中を見て覚える」という従来の慣習が根強く残っており、体系的な技術継承システムが整備されていません。経験者の判断やノウハウをマニュアル化するのが難しく、技術が特定の人に依存する属人化が進んでいます。

工数や納期に追われる現場では、新人への指導時間を確保するのも困難な状況です。結果として若手が技術を習得する前に離職するケースが多発しています。

長時間労働の慢性化

建設業の年間実労働時間は他産業と比較して340時間以上長く、慢性的な長時間労働となっています。土曜日や祝日も出勤するケースが多く、休日数も他業種より16日少ない状況です。45~49歳で賃金がピークとなる傾向があり、マネジメントスキルが十分に評価される環境が整っていません。

人間関係の改善必要性

建設現場は工期が長く、数ヶ月から1年以上同じメンバーで働くことが多いため、人間関係が閉鎖的になりがちです。職人気質の現場監督が多く、丁寧な指導を受けられない場合があります。直属の上司との相性が悪いと逃げ場がなく、精神的な負担から早期退職につながるケースも少なくありません。

福利厚生の見直し

建設業界では社会保険に未加入で働く人が多く、ボーナスが支給されない企業も存在します。朝早い出勤や日曜日のみの休日など、他業界と比較して福利厚生が行き届いていません。就職先・転職先としての魅力に欠けるため、優秀な人材の確保が困難になっています。

建設業の人材を育成する方法とは
建設業の人材を育成する方法とは

効果的な人材育成には多角的なアプローチが必要です。研修制度の充実、コミュニケーション強化、政府施策の活用、デジタル化推進、キャリアプラン構築など、さまざまな手法を組み合わせることで成果を上げられます。従来の慣習にとらわれず、現代の若手に適した育成方法を取り入れることが重要です。

研修制度や勉強会などを充実させる

新入社員研修では基本的な立ち振る舞いやマナー、安全対策について教育します。技術研修を通じて現場業務に必要なスキルを身につけさせ、不明点を質問できる環境を整えることが大切です。

 

社外研修を活用すれば、より専門的な知識や資格取得も可能になります。OJT(職場内訓練)では、上司や先輩が直接仕事を教えることで、実践的なスキルを効率的に習得できます。

コミュニケーションを強化する

若手社員が積極的にコミュニケーションを取れる環境づくりが重要です。

 

直属の上司以外との面談機会を設けたり、メンター制度を導入したりすることで、人間関係の幅を広げられます。業務日報をデジタル化してコメント機能を追加すれば、文章によるコミュニケーションも活性化します。閉塞感を払拭し、相談しやすい職場環境を構築することが離職防止につながるでしょう。

 

チームビルディング研修や懇親会の開催により、職場の結束力を高められます。オープンな対話文化を醸成することで、問題の早期発見と解決が可能になるでしょう。

政府の取り組みを取り入れる

国土交通省と厚生労働省が推進する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を活用することで、技能者の資格や就業履歴を客観的に評価できます。2023年から登録が原則義務化されており、適切なキャリア形成を支援するツールとして機能しています。

 

政府の働き方改革施策も積極的に取り入れ、業界全体の魅力向上に貢献することが大切です。建設業働き方改革加速化プログラムなどの取り組みを参考にすることで、労働環境の改善を図れます。政府の支援制度を有効活用することで、限られた予算でも効果的な人材育成が実現できるでしょう。

 

ITやデジタル化を進める

BIMの利用促進により、設計・施工・管理の一括管理やリモートサポートが可能になります。ドローンによる現場管理や測量、ロボットを使った自動化、センサーによるデータ収集など、最新技術の導入で業務効率化を図れます。また、クラウド環境での工程や図面共有により、情報の可視化と共有が促進されるのも特徴です。

 

デジタル化は若手にとって魅力的な職場環境の構築にもつながります。AIやIoTを活用した予防保全システムの導入により、安全性の向上も期待できるでしょう。

キャリアプランを構築する

中長期的なキャリアプランを立てることで、若手のモチベーション向上と離職防止を図ることが可能です。上司や先輩の実際のキャリアパスを説明し、将来像を具体的にイメージできるようにサポートします。

 

3年後、5年後の目標を明確にして、そのために必要な技術や資格を体系的に整理することが重要です。個人の成長と会社の発展を両立できるキャリアプランの作成を支援します。

 

定期的なキャリア面談を実施することで、目標の見直しと軌道修正を行えます。昇進・昇格の基準を明確化することで、従業員の成長意欲を刺激できるでしょう。

建設業の人材育成で使える研修サービスとは
建設業の人材育成で使える研修サービスとは

専門的な研修サービスを活用することで、体系的かつ効率的な人材育成が可能です。建設業界に特化したカリキュラムや実践的な内容を提供する研修会社を選ぶことで、現場ですぐに活用できるスキルを身につけられます。外部の専門知識を取り入れることで、社内だけでは困難な高度な教育も実現できます。

日本コンサルタントグループ

建設分野での教育・研修サービスに対応しており、新人・若手の施工監理技術者向けの研修・講習が豊富に用意されています。「建築工事の施工図研修」「建設設備工事の基本研修」「建設業におけるSDGs」など、実務に直結する内容を学べます。中堅社員やベテラン社員向けの研修も多く、社内の人材強化に幅広く活用できるサービスです。

insource

株式会社インソースが提供する研修サービスでは、建設業向けの幅広い研修プランを用意しています。「建設業界向け若手社員研修〜仕事の進め方編」「新人社員研修~ビジネス基礎 チームで働ける新人になる」など、若年労働者向けの研修が充実しているのが特徴です。人材を育成する側向けの研修も提供されており、指導者のスキル向上にも貢献します。

ハタコンサルタント株式会社

建設分野に特化した経営・技術コンサルティングを展開しており、自社の課題に合わせたオーダーメイドのカリキュラムを提供しています。新人研修から工事部長・課長、特別教育まで、階層別の研修を受けられます。画一的な研修ではなく、企業固有の問題や目標に対応したカスタマイズされた内容で、より効果的な人材育成を実現できるでしょう。

建設業の人材育成で活用できる助成金とは
建設業の人材育成で活用できる助成金とは

政府は建設業の人材育成を支援するため、さまざまな助成金制度を設けています。訓練費用や賃金の一部を補助することで、企業の負担を軽減しながら人材育成を促進しています。制度を有効活用することで、限られた予算でも充実した教育プログラムを実施可能です。

人材開発支援助成金

建設労働者認定訓練コースでは、認定職業訓練や指導員訓練の実施に対して訓練経費の6分の1、または賃金助成として1日3,800円が支給されます。建設労働者技能実習コースでは、技術向上のための実習受講に対して経費の3/4(中小企業20人以下)や賃金助成8,550円(20日分まで)が支援されます。

雇用する建設労働者の技能向上を図る企業にとって有効な制度です。

人材確保等支援助成金

魅力ある職場づくりを目的とした労働環境向上の取り組みに対して助成されます。建設キャリアアップシステム等普及促進コース、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース、作業員宿舎等設置助成コースなどがあります。

 

若年・女性労働者の入職・定着を図る事業では、中小建設事業主の場合、支給対象経費の3/5が助成され、研修受講時は対象労働者1人当たり日額8,550円が支給されます。

トライアル雇用助成金

35歳未満の若年者や女性を一定期間試用雇用する中小事業主に対して、若年・女性建設労働者1人につき月額最大4万円(最大3ヶ月間)が助成されます。

常用雇用への移行を前提とした制度で、雇用のミスマッチを防ぎながら人材確保を図れます。一般トライアルコースの支給決定を受けることが受給条件となっており、就労日数によって減額される場合があります。

建設業の人材育成の成功ポイント
建設業の人材育成の成功ポイント

人材育成を成功させるには、若手への適切なフォロー体制構築、労働環境の整備、多様性の受け入れが重要です。

従来の慣習を見直し、現代の働き方に適応した育成システムを構築することで、定着率向上と技術継承の両立を図れます。企業全体で人材育成に取り組む姿勢が大切です。

上司や先輩が若手を積極的にフォローする

現代の若者は放置されることを嫌い、不安を感じやすい傾向があります。直属の上司以外にもフォロー担当を決めておくことで、現場が忙しい場合でも適切なサポートを提供できます。

効果的なフォロー方法

  • 定期的な面談やコミュニケーション機会の設定
  • 仕事に関するフィードバックの適宜実施
  • 感情的な叱責や厳しい指導を避ける
  • 丁寧な指導と適切な評価の実施
  • 複数人でのサポート体制構築

若手のモチベーション維持を図りながら、安心して働ける環境づくりが重要です。

労働環境を整備する

長時間労働の是正や休日の確保、社会保険への加入促進など、基本的な労働条件の改善が必要です。安全管理の徹底により、危険な作業環境を改善し、働きやすい職場づくりを進めましょう。

 

IT技術の導入により業務効率化を図り、従業員の負担軽減と生産性向上を両立します。福利厚生の充実により、他業界と比較して遜色のない待遇を提供することが人材確保につながります。

女性や外国人も育成する

労働人口減少に対応するため、女性活躍推進と外国人労働者の受け入れ体制整備が重要です。労働環境の改善や福利厚生の充実により、女性が働きやすい職場環境を構築しましょう。外国人労働者に対しては、言語サポートや文化的配慮を含めた教育プログラムを用意することが大切です。多様性を受け入れることで、人材不足の解決と新たな視点の導入を同時に実現できます。

まとめ

建設業界の人材育成は、深刻な人手不足と技術継承の危機を乗り越えるための重要課題です。従来の「背中を見て覚える」慣習から脱却し、体系的な研修制度とコミュニケーション重視の育成方法に転換することが必要です。

政府の支援制度や助成金を活用しながら、IT技術の導入による業務効率化、労働環境の改善、多様な人材の受け入れを進めることで、持続可能な人材育成システムを構築できます。若手の特性を理解し、適切なフォロー体制を整えることで、定着率向上と技術力の維持・発展を両立させましょう。

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