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土木工事のトレンチとは?基礎知識から安全対策まで解説

土木工事のトレンチとは?基礎知識から安全対策まで解説

土木工事におけるトレンチは、設備配管や構造物を設置するために地面に掘削する溝のことです。建築現場では欠かせない工法であり、地下構造物の構築や埋設管の配置に広く活用されています。


本記事では、トレンチの基本的な意味から具体的な施工手順、安全対策まで詳しく解説します。

土木工事の「トレンチ」とは何か?
土木工事の「トレンチ」とは何か?

トレンチは土木工事において地中に設ける溝のことで、配管や構造物の設置に不可欠な要素です。まずはトレンチの基本的な定義と、関連する工法や採用事例について詳しく見ていきましょう。

トレンチの基本的な意味と目的

トレンチは英語で「溝」や「堀」を意味し、土木工事においては床下や地中に設ける細長い掘削部分を指します。主に配管やケーブルなどのインフラ設備を地中に埋設する際に使用され、排水管を通す場合は排水トレンチ、電気ケーブルを通す場合はケーブルトレンチと呼ばれます。

トレンチは構造物の基礎を支える重要な役割も担っています。雨水や汚水の排水経路を確保したり、地下空間にインフラ設備を収めたりする目的で設けられます。都市部のインフラ整備では、地上の景観を損なわずに設備を配置できる点が重視されています。

トレンチカット工法とオープンカット工法の違い

トレンチカット工法は、掘削予定地の外周部分を溝状に掘削し、そこに地下構造物を順次構築していく方法です。構築した構造物が土留めの役割を果たすため、内部の掘削を安全に進められます。深さが幅よりも大きな溝を掘削する点が特徴です。

一方、オープンカット工法は斜面を残しながら掘削を進める方法で、土留め作業が不要になります。根切り作業だけで完了するため、コストを抑えられる利点があります。ただし、45度程度の法面角度を保つ必要があるため、根切りの深さに応じて広い範囲の土地が必要になります。狭い敷地や崩れやすい土質の場所には適していません。

 

トレンチ工法が採用される主な工事例

トレンチ工法は、地下にインフラ設備を埋設する工事や構造物の基礎を構築する際に採用されます。主な工事例として、地下連続壁工事、下水道管やガス管の埋設工事、基礎工事が挙げられます。それぞれの工事について詳しく見ていきましょう。

地下連続壁工事

地下連続壁工事では、トレンチカット工法が基本です。地下水の影響を受けにくいため、安定液や止水工法などを併用することで施工を進めやすい特徴があります。土留め壁として機能する構造物を先に構築することで、内部の掘削作業の安全性が高まります。

下水道管やガス管の埋設工事

配管やケーブルなどのライフラインを地中に埋設する工事では、トレンチを掘削して設備を配置します。トレンチの底に保護材や詰め物を敷き、その上に管を設置してから埋め戻す手順で進めます。都市部では地上の景観を保ちながらインフラ整備ができる点が評価されています。

 

基礎工事

建築物の基礎を構築する際にも、トレンチ掘削が必要になります。掘削面積が広い現場では、大型重機の投入がしやすくなり、作業効率が向上します。地下構造物の施工では、先行して構築した躯体を活用できるため、採光を考慮しない地下空間の構築に向いています。

なぜ選ばれる?トレンチ工法を採用する4つのメリット
なぜ選ばれる?トレンチ工法を採用する4つのメリット

トレンチ工法は、周辺環境への配慮や工期短縮、安全性の確保など、多くの利点を持つ施工方法です。

 

  • 周辺環境への影響が少ない
  • 工期の短縮につながる
  • 高い安全性を確保できる
  • 都市部や狭い場所での工事に最適



ここでは、トレンチ工法が選ばれる主な理由を4つの観点から解説します。

周辺環境への影響が少ない

トレンチ工法は、掘削範囲を必要最小限に抑えられるため、周辺環境への影響を軽減できます。溝状に掘削を進めることで、広範囲にわたる土地の改変を避けられます。住宅地や商業地域など、人々の生活圏に近い場所での工事でも騒音や振動を抑えながら作業が可能です。

地下水への影響も最小限に留められます。トレンチを掘削すると自然に排水されるため、地盤沈下や周辺建物への悪影響を防げます。環境への配慮が求められる現代の工事において、重要な選択肢です。

工期の短縮につながる

土留め工事や埋め戻し作業が簡素化されるため、全体の工期を短縮できます。掘削面積が広い現場では、構造物の外周にトレンチを作った後、内部を重機で効率的に掘削可能です。大型重機が入りやすい環境を整えられる点も、作業のスピードアップに貢献します。

先行して構築した躯体を土留めとして活用できるため、二度手間を省けます。工程の合理化により、コスト削減にもつながります。工期の遵守が求められるプロジェクトにおいて、トレンチ工法の採用は有効な選択です。

高い安全性を確保できる

構造物を先に構築して土留めの役割を担わせることで、内部の掘削作業の安全性が高まります。土砂崩壊のリスクを低減し、作業員の安全を守れます。地盤の状態が悪い場所でも、適切な対策を講じながら施工を進められます。

トレンチ掘削により地下水が自然に排水されるため、ヒービングやボイリングといった地盤の破壊現象を防げます。水位の管理が容易になり、予期せぬ事故の発生を抑えられます。安全管理が重視される現代の建設現場において、信頼性の高い工法です。

都市部や狭い場所での工事に最適

限られたスペースでも効率的に施工できる点が、都市部での工事に適しています。周辺建物への影響を最小限に抑えながら、地下構造物を構築できます。狭い道路や密集した住宅地でも、トレンチ工法なら作業空間を確保しやすくなります。

地上の交通や人々の生活を妨げることなく、地下でインフラ整備を進められます。都市機能を維持しながら工事を実施できる点が、発注者や地域住民から評価されています。スペースの制約が厳しい環境でこそ、トレンチ工法の真価が発揮されます。

トレンチ工法のデメリットと対策
トレンチ工法のデメリットと対策

トレンチ工法には多くの利点がある一方で、地盤条件や施工上の制約など、注意すべき点も存在します。

 

  • 地盤によっては適用が難しいケースも
  • 掘削の深さや幅に制限がある
  • 土留め壁の品質管理が重要になる



ここでは主なデメリットと、それぞれに対する具体的な対策方法を紹介します。

地盤によっては適用が難しいケースも

軟弱な地盤や砂質土では、トレンチの壁面が崩れやすくなります。地下水位が高い場所では、湧水により作業が困難になる場合があります。岩盤が浅い位置にある地域では、掘削に時間とコストがかかります。

地盤調査を事前に十分に行い、土質の特性を把握することが重要です。必要に応じて地盤改良や薬液注入などの対策を講じましょう。安定液を使用して壁面を保護する方法も有効です。地盤条件に応じた適切な施工計画を立てることで、リスクを軽減できます。

掘削の深さや幅に制限がある

トレンチ工法では、深さが幅よりも大きくなるように掘削する必要があります。浅い掘削では、安定した溝を維持できません。幅が広すぎると、構造物を土留めとして活用する効果が薄れます。

掘削の深さや幅は、構造物の設計や地盤条件に基づいて決定します。事前のシミュレーションにより、適切な寸法を算出します。制限を超える場合は、他の工法との併用や設計の見直しを検討しましょう。技術的な制約を理解したうえで、施工計画を立てることが求められます。

土留め壁の品質管理が重要になる

構造物が土留めの役割を果たすため、その品質が工事全体の安全性を左右します。鉄筋の配置やコンクリートの打設において、高い精度が求められます。施工不良があると、後の掘削作業で崩壊の危険性が高まります。

品質管理体制を徹底し、各工程で検査を実施しましょう。鉄筋のかぶり厚や配筋間隔を確認し、コンクリートの強度試験を行います。経験豊富な技術者による監理のもと、慎重に作業を進めてください。

トレンチ掘削の具体的な施工手順
トレンチ掘削の具体的な施工手順

トレンチ掘削は、準備から完了まで複数の工程を経て行われます。

 

  • 準備工・測量
  • 掘削と土留め
  • 鉄筋かごの建て込み
  • コンクリートの打設
  • 埋め戻し・完了

 

ここでは各段階における作業内容と、品質管理のポイントを詳しく解説します。

準備工・測量

施工に先立ち、現場の測量を行い掘削位置を正確に決定します。基準点を設置し、掘削範囲を明確に示します。地下埋設物の調査を実施し、既存の配管やケーブルの位置を確認します。

安全管理計画を策定し、作業員への教育を行います。必要な機材や資材を手配し、搬入経路を確保します。近隣住民への説明や許可申請など、関係者との調整を済ませます。綿密な準備が、スムーズな施工を実現します。

掘削と土留め

測量結果に基づき、外周部分を溝状に掘削します。クラムシェルバケットやバックホウなどの重機を使用し、計画通りの深さと幅で掘り進めます。掘削した土砂は適切に処理し、現場外へ搬出します。

掘削と並行して、土留め壁の設置を進めます。鋼矢板や親杭横矢板を打ち込み、壁面の崩壊を防ぎます。安定液を注入して、地盤を固定する場合もあります。

鉄筋かごの建て込み

土留め壁が完成したら、鉄筋かごを建て込みます。設計図に従い、鉄筋を組み立てて所定の位置に設置します。かぶり厚を確保し、鉄筋が適切に配置されているか確認します。

鉄筋の継手や定着長さにも注意を払いましょう。検査により、基準を満たしていることを確認します。鉄筋工事の精度が、構造物の強度に直結します。

コンクリートの打設

鉄筋かごの設置後、コンクリートを打設します。トレミー管を使用し、水中でも品質を保ちながら流し込みます。

施工中は、コンクリートの流動性や温度を管理します。養生期間を十分に取り、強度が発現するのを待ちます。品質試験により、所定の強度が得られたことを確認します。

埋め戻し・完了

構造物の構築が完了したら、内部の掘削を進めます。構造物が土留めの役割を果たすため、安全に作業できます。掘削後、必要に応じて埋め戻しを行います。

埋め戻しには、掘削土や購入土を使用します。締固めを適切に行い、地盤の沈下を防ぎます。最後に、仕上げ工事や舗装を施し、現場を原状に復します。完成検査を経て、工事は完了です。

トレンチ掘削における安全対策の重要性
トレンチ掘削における安全対策の重要性

トレンチ掘削では、転落や土砂崩壊、酸欠など、さまざまな危険が潜んでいます。労働安全衛生規則に基づく適切な対策を講じることが、作業員の命を守る鍵となります。ここでは主な安全対策について解説します。

労働安全衛生規則で定められた義務

トレンチ掘削では、労働安全衛生規則に基づく安全管理が必須です。掘削深さが1.5メートルを超える場合、掘削作業主任者の選任が義務付けられています。作業主任者は、作業の指揮や安全確認を担当します。

作業員は保護帽や安全靴などの保護具を着用します。掘削箇所周辺には、柵や標識を設置し立入禁止区域を明示します。定期的な点検により、機材の不具合や地盤の変化を早期に発見します。法令遵守が、安全な作業環境を作り出します。

転落・墜落災害を防ぐための対策

トレンチへの転落や墜落は、重大な事故につながります。掘削箇所の周囲に手すりや覆いを設置し、作業員の安全を確保します。夜間や視界が悪い状況では、照明を増強し危険箇所を明示します。

昇降設備を適切に配置し、安全な上り下りを可能にします。作業員への安全教育を徹底し、危険予知活動を実施します。ヒヤリハット事例を共有し、再発防止に努めます。日々の安全意識が、事故のない現場を実現します。

土砂崩壊(土止め支保工)に関する注意点

土留め壁の強度不足や地盤の変化により、土砂崩壊のリスクがあります。土止め支保工を適切に設置し、壁面を支えます。切梁や腹起しを用いて、土圧に対抗します。

定期的な点検により、支保工の変形や緩みを確認します。異常が見つかった場合は、直ちに補強や修正を行いましょう。地下水の管理にも注意を払い、水位の上昇による土圧の増加を防ぎます。予防的な対策が、崩壊事故を未然に防ぎます。

酸欠・硫化水素中毒のリスクと対策

トレンチ内部は、酸素欠乏や硫化水素の発生により、作業員の生命に危険が及ぶ場合があります。作業前に酸素濃度や有害ガスの測定を実施しましょう。基準値を下回る場合は、換気や酸素供給を行います。

作業員は、酸素マスクや検知器を携帯してください。複数人での作業を原則とし、監視体制を整えます。緊急時の救助計画を策定し、訓練を実施します。

土木のトレンチ工法に関するよくある質問
土木のトレンチ工法に関するよくある質問

トレンチ工法について、現場でよく寄せられる疑問にお答えします。

掘削作業主任者になるには、どんな資格が必要ですか?

掘削作業主任者技能講習を修了する必要があります。受講資格として、一定の実務経験が求められます。土木工事や建築工事に従事した経験があれば、受講可能です。

講習では、掘削工事の安全知識や関係法令を学びます。修了試験に合格することで、資格を取得できます。作業主任者として選任されると、現場の安全管理を担う重要な役割を果たします。

「安定液」とは何ですか?なぜ必要なのでしょうか?

安定液は、掘削した壁面を保護するために注入する液体です。主にベントナイトと水を混ぜた泥水が使用されます。壁面に膜を形成し、土砂の崩壊や地下水の流入を防ぎます。

安定液により、トレンチ内の作業環境が改善されます。掘削の深さや地盤条件に応じて、適切な濃度や粘性を調整します。品質管理を徹底し、効果を維持することが重要です。

小規模な工事でもトレンチ工法は使えますか?

小規模な工事でも、トレンチ工法は採用可能です。住宅の基礎工事や配管の埋設など、さまざまな場面で活用されています。掘削の深さや範囲に応じて、適切な施工方法を選択します。

小規模工事では、簡易な土留めや人力による掘削も検討されます。コストや工期を考慮し、現場に合った方法を採用します。専門業者に相談し、見積もりを取ることをおすすめします。

まとめ

土木工事におけるトレンチは、地中に設備を埋設したり構造物を構築したりするための掘削部分です。トレンチカット工法は、外周に溝を掘削して構造物を順次構築し、土留めとして活用する方法で、安全性が高く工期短縮につながります。地盤条件や掘削の深さに応じて適切な施工計画を立て、品質管理と安全対策を徹底することが重要です。法令を遵守し、事故のない現場を実現しましょう。

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