
コラム
外国人雇用について考える~企業が抱える技術者不足と多様性の導入~

近年、日本の企業が直面する大きな課題の一つに、20代・30代の技術者不足があります。特にIT・建設・製造・介護分野では、若手人材の確保が難しくなっており、企業の生産性や競争力に影響を及ぼすケースも少なくありません。
この背景を受けて、外国人雇用への関心が高まっています。外国人雇用は、単なる人材補充ではなく、企業の成長戦略としても注目されています。
本コラムでは、外国人雇用の全国的な推移や、日本人雇用のみの場合のメリット・デメリット、外国人雇用のメリット・デメリット、注意点について紹介します。
さらに派遣社員からの導入をオススメする理由について詳しく解説します。
外国人雇用の全国推移

総務省や厚生労働省の統計によると、近年、日本国内での外国人労働者数は増加傾向にあります。特に都市部のIT・建設・介護業界でその傾向が顕著で、地方でも人手不足を補う形で外国人材の採用が進んでいます。
全国的に見ても、外国人労働者の存在感は増しており、企業の人材戦略において重要な役割を果たしています。
外国人材の受け入れが進む背景には、若手技術者不足を補うだけでなく、グローバル化に対応した多様性のある職場作りが企業競争力を高めるという考え方があります。実際、外国人技術者がチームに加わることで、新しい視点や異なる文化的なアイデアが生まれ、イノベーションの促進にもつながっています。
日本人雇用のみのメリットとデメリット

従来の日本企業では、日本人社員のみを雇用するケースが一般的でした。
メリットとしては以下が挙げられます。
- コミュニケーションが円滑:言語の壁がないため、意思疎通がスムーズで誤解が生じにくい。
- 文化・慣習の理解が容易:労働習慣や社会慣習の違いによるトラブルが少ない。
- 教育コストが比較的低い:文化や慣習を共有しているため、研修がスムーズに行える。
一方、デメリットも存在します。
- 若手技術者不足:20代・30代の技術者が不足している分野では、人材確保が困難。
- 多様性の欠如:異なる視点や経験を持つ人材が少ないため、イノベーションの機会が限定される。
- グローバル対応力の低下:海外取引や海外展開の際に、国際的なノウハウが不足しやすい。
日本人のみの雇用は、安定性や教育面でのメリットがある一方で、企業の将来的な成長や技術革新の面では課題が残ります。
外国人雇用のメリット・デメリット

外国人雇用には、さまざまなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 若手技術者不足の解消:20代・30代の外国人技術者を採用することで、現場の即戦力を確保可能。
- 多様な視点によるイノベーション促進:異文化のバックグラウンドを持つ人材が加わることで、新しいアイデアや解決策が生まれやすくなる。
- 国際的な業務展開への対応力向上:海外取引や海外拠点とのやり取りが円滑になり、グローバル市場での競争力が向上する。
デメリット
- 言語や文化の違いによるコミュニケーション課題:意思疎通のミスや誤解が発生しやすい。
- ビザや労働法手続きの煩雑さ:就労ビザの取得や更新、在留資格の確認が必要。
- 教育・研修コストの増加:文化や業務習慣が異なるため、研修やフォローアップに時間とコストがかかる。
外国人雇用は、短期的には手間が増えるものの、長期的には企業の成長や多様性の確保に大きな効果があります。
外国人雇用の注意点

外国人雇用を成功させるためには、以下の点に注意が必要です。
- 就労ビザの確認
雇用する外国人が適切なビザを保持しているか、在留期間や就労範囲を確認することが必須です。 - 労働条件や給与体系の整備
言語や文化の違いを考慮し、わかりやすい雇用契約や給与体系を整備することが大切です。 - 研修やフォローアップの実施
日本の職場文化や業務習慣の違いを補うために、研修や定期的なフォローを行うことで、定着率や業務効率の向上につながります。 - 社内コミュニケーション環境の整備
多言語対応のマニュアル作成や翻訳ツールの活用、社内ルールの明文化など、スムーズな業務遂行のための環境作りが重要です。
外国人雇用を検討するなら派遣社員からの導入をオススメ
外国人雇用をするなら、いきなり正社員として採用するのではなく、派遣社員として受け入れる方法は多くの企業で効果的です。
理由として以下の3つが挙げられます。
実務能力や職場適応性を確認できる
派遣社員として一定期間働いてもらうことで、業務能力やチームへの適応力を見極められます。
社内体制の整備やフォロー体制を試せる
外国人社員を受け入れる際に必要な研修やサポート体制を事前に確認でき、問題点の改善が可能です。
採用リスクを最小限に抑えられる
正社員採用前に派遣で試すことで、雇用契約やビザ取得のリスクを軽減できます。
段階的な導入を行うことで、企業は安心して外国人雇用を進められます。
外国人雇用の成功事例

実際に外国人雇用を積極的に行う企業では、成功事例が多く報告されています。例えば、建設業のある企業では、20代・30代の日本人技術者が不足していたため、東南アジア出身の若手技術者を派遣社員として受け入れました。
最初は言語の壁や業務理解の遅れが課題となりましたが、段階的な研修とメンター制度を導入した結果、1年以内にチームの即戦力として活躍できるようになりました。この結果、プロジェクトの納期短縮や品質向上にもつながりました。
IT業界でも、外国人エンジニアを採用することで多様な技術知識や国際的な視点が社内に入り、新しいサービスやシステム開発のアイデア創出に役立った事例があります。こうした事例は、外国人雇用が単なる人材補充ではなく、企業の成長戦略の一部として活用できることを示しています。
企業文化の整備と多様性の受容
外国人雇用を進めるうえで、企業文化の整備も重要です。多様な文化や価値観を受け入れる職場を作ることが、外国人社員の定着率や業務効率を高めます。具体的には以下の取り組みが有効です。
社内ルールやマニュアルの明文化
業務手順や安全ルールを多言語で整備することで、誤解やトラブルを防止できます。
コミュニケーションツールの活用
翻訳アプリやチャットツールの導入により、意思疎通のストレスを軽減できます。
多様性を尊重する風土づくり
社内で異文化交流の機会を設け、意見を出しやすい環境を整えることで、外国人社員も積極的に業務に参加できます。
こうした取り組みは、外国人社員だけでなく日本人社員にとっても働きやすい環境となり、企業全体の生産性向上につながります。
まとめ
外国人雇用は、若手技術者不足を補い、企業の多様性と競争力を高めるチャンスです。導入の際は、段階的に派遣社員として受け入れ、研修・フォローを徹底することでリスクを最小限に抑えつつ効果的な活用が可能です。
さらに、企業文化やコミュニケーション環境を整えることで、外国人社員が能力を最大限に発揮できる職場が作れます。技術者不足が深刻化する現代、日本企業が競争力を維持・向上させるためには、外国人雇用の積極的な導入と、多様性を受け入れる職場づくりが不可欠です。
まずは派遣社員からの導入を検討し、実際の運用を通じて課題を改善しながら、正社員としての採用につなげることが、外国人雇用成功への最も現実的なステップです。
国土工営コンサルタンツでは社内で活躍している外国人技術者も多く、育成にも力を入れており、CADオペレーターや技術者の派遣・紹介も行っています。
外国人の採用をお考えの方や、採用後の教育・育成についてのお困りごとがある方など、何かお役に立てることがあるかもしれませんので、どうぞお気軽にご相談ください。