コラム

土木業界の外国人社員

土木業界の外国人社員

日本の土木業界は人材不足で、合併や倒産する会社が増えています。その一方、海外では土木の専門学校を出たのに自国では就職できない若者が多く、彼らは外国への就職を希望しています。

 

その結果、日本では外国人社員を雇って人材不足を補おうとする会社が増えてきました。今回は実際に外国人を多く雇用している弊社が、土木目線で外国人に関する意見を紹介します。


日本人目線:外国人社員の良いところ

弊社は外国人を正社員として雇用して約10年になりました。最初は1人、3人と少人数でしたが、今では社内の半数が外国人で、他社への外国人派遣も行っています。

 

外国人を雇うメリットもありますが、中々上手くいかない問題点も色々出てきました。今回は日本人の目線から見た外国人社員への意見をご紹介します。

 

まずは実際に外国人社員を雇用して感じたメリットについて、日本人社員からの意見をまとめました。

 

「とても真面目で従順」 

弊社の外国人社員は「土木の仕事をする為に日本に来た」人がほとんどで、「日本で頑張って稼ごう」「キャリアアップを目指そう」と真面目に頑張る人が多いです。日本の細かい指示に対しても文句を言わずに対応してくれています。

 

社員のほとんどがベトナムやミャンマーなどのアジア圏の社員で、日本と同じで元々真面目な人が多いのかもしれません。

 

自然豊かな場所から来日してきて、実際に施工現場に出たい人も多いので、人材不足が深刻化している日本の田舎にも快く移住してくれるケースが多くて助かっています。

 

「若くて優秀な人材」

弊社では主に建築・土木の大学を出た外国人を採用しているので、図面などの知識があり、尚且つ日本語を使える優秀な人材が集まっています。

 

最初は専門用語や自国との働き方の違いに戸惑いますが、元々知識と意欲があるので、実際に現場に出たり、日本で資格を取って活躍する将来有望な社員もいます。

 

全員20~30代なので、社内に若い人が増えて雰囲気が明るくなりました。日本語クイズなどの勉強会も開いており、社内に笑い声が響くこともありますよ。

 

「多様性により、『こうあるべき』という認識が緩んだ」

社内に昔からあるルールや、細かい決まり事などはありませんか? 

例えば「昔は丁寧に教えてくれなかった。仕事は見て覚えるもの」という考え方。自分で考えて経験を積みながら学ぶこのやり方も良いですが、時間がかかる上にミスも起きやすいでしょう。

 

日本の若者でも「マニュアル化して」と文句を言いそうです。特に外国人に「見て覚える」は難しいでしょう。そもそも母国語では無いので、指示の1つ1つを理解するだけで大変です。

 

弊社では外国人社員が増えて、指示を文字化することが多くなりました。順序を資料にして、話す時もゆっくり短い言葉で伝えています。指示書を作ることで指示側も内容を整理できますし、ミスも減り、そのまま新人へのトレーニング教材にも使えます。

 

日本人目線:外国人社員の困るところ

困っていること

次は外国人社員に対し、困っていることをまとめました。生まれ住んだ場所が違うと、日本と違う価値観が見えてきます。

 

「受動的で言われないことはしない」

例えばミャンマーでは、学校では先生の話を静かに聞き、生徒からの発言はあまり無いそうです。それが根付いているせいか、ミャンマー人は自分から意見を出すのが苦手に見えます。周りが忙しくしていても、自分から「手伝いましょうか?」と声をかけることも少ないです。

 

来日すると、マイナンバーカードや役所への手続きなど面倒なことが多いですが、その時に「書類は書けた?」「もう手続きはした?」と尋ねると、「まだです」と答える人が多いです。


日本語の理解不足もありますが、大事なことだと理解できておらず、すぐに準備するべきだと気づけない場合があります。1度指示しただけでは完全に伝わらない時が多々ありますので、外国人の「はい、分かりました」はあまり信用せず、「何が分かったの?自分の言葉で説明してみて」と聞き返すことが大事です。

 

「入社1~2年で辞める人がいる」

日本人と同じで、彼らも待遇や業務内容に不満があればすぐに転職します。同じ国同士での仲間意識も強いので、同じ時期に複数人辞めたり、「友達がいる会社に行きたいから」という理由で転職する人もいました。

 

人手不足だからと早く安く外国人を雇おうとするのは、結局損をするかもしれません。外国人社員を数年観察した結果から推察しますと、「日本語があまりできなくて、自分と他人を比べて文句を言う人」はすぐ辞める傾向にあります。

 

仕事をしていると「自分より他の人の方が待遇が良い」「上司が私の言いたいことを理解してくれない」とマイナスの意見を言う人がいるでしょう。しかし、そういう人は自分のことを客観視できていません。

 

待遇が悪いと感じるなら、その原因が必ずあるはずです。筆者が思う原因は「日本語力不足からのコミュニケーション不足」です。日本語の指示をきちんと理解できなければミスが起き、なぜミスをしたのかをカタコトの日本語で話しても上司は理解できない。


その繰り返しでどんどん悪い方へ進んでしまいます。日本人を採用する時と同じで、「どんなことができて」「どういう考えを持って」「何をしたいのか」をハッキリ見極めて採用するのがお互いの為にも大事です。

 

日本人目線:外国人社員に対して工夫していること

工夫していること

 

日本語が正確に伝わらない時があり、尚且つまだ社会人経験の浅い20~30代の外国人が多い弊社では、彼らへの良い伝え方はないかと日々工夫しています。

 

『分からなくて当然』という気持ちで接する

日本語力不足で中々理解してくれなかったり、自分から報連相をしなかったり、上司は困ることがあるでしょう。これはもう最初から「分からなくて当然」と思って接した方がいいです。あまり相手に期待しすぎると疲れてしまいます。

 

N2(日本語能力レベル2)なら大学生、N3以下なら中高生と同じ日本語レベルで話しかけるのが良いです。

 

相手が間違った日本語を使っていたら、正しい日本語で言い直してあげましょう。文字で教えるとわかりやすいです。間違ったまま覚えないように、早めに正しい日本語を覚えてもらいましょう。

 

「短く端的な言葉で要点を伝える」

これは日本人同士でも大事なことですね。皆さんは自分の話し方を録画したり、文章にしたことはありますか? 

 

同じことを何回も言ったり、「~ということで」「~そうじゃないかもしれない」「いや、大丈夫」などと意味が無かったり、ややこしい表現を無意識に多用しているはずです。

 

外国人は聞いた言葉をまず母国語に翻訳して、単語や文章を頭の中でパズルのように組み合わせて考えています。なるべく簡単な言葉を使い、短く指示を出しましょう。これを意識すれば指示をする方もどんどん説明が上手くなりますよ。

 

『〇〇ということですね』と確認させている

来日したばかりや、日本語力の低い社員には必ずこの確認をしましょう。彼らはハッキリわからない時でも「はい、わかりました」と言ってしまい、「ではわかったことを復唱して」と聞くと、苦笑いで口ごもります。

 

知らない単語や言い回しがたくさんあり、ハッキリ意味がわからないのは当然なので良いのですが、「わからない」と意思表示をしないと、後々大きな問題に繋がります。

 

報連相も「1つできたら見せて。チェックするから」「5~10分悩んだら相談して。悩む時間がもったいないから」と自分から細かくコミュニケーションを取るように指導しましょう。

 

日本人目線:外国人社員に対して希望すること

希望すること

弊社では10年以上日本で働くことを前提に採用しており、その分彼らへの希望も大きいです。せっかく縁あって入社してくれたのですから、どんどん成長してほしいですね。

 

「母国で土台を作ってから来日」

海外にいる人材を日本に呼ぶ場合、仕事ができる程度の日本語力を身につけてから来日させた方が良いです。N3以上の日本語力は必須で、それ以下だと日常会話もまともにできません。即戦力として来てほしいなら、N2は必要です。

 

N3は日常会話ができる程度なので、面接時も一見問題無いように感じますが、仕事で使う会話は半分程しか理解できません。業務や役所の書類内容もハッキリ理解できないでしょう。「はい」と返事をしたり、指示をオウム返しに復唱することはできますが、自分の意見を日本語で発信するのに苦戦します。日本に長年住んでいる同国の先輩がいれば良いですが、同じ言語でのフォローが無いとコミュニケーションに問題が生じます。

 

N2は専門用語などは少し難しいですが、業務の指示も大体理解できて、指示側も安心できるでしょう。もし余裕があれば日本の常識やマナー、日本人の仕事に対する姿勢なども教育できると良いですね。

N2を合格しているなら、本気で日本語を勉強した証拠にもなります。

日本が好きで、真面目に働きたいと思っている人は独学でN2・3以上の能力を持っています。逆に日本への強い思いが無い人は、業務ができるレベルまで日本語力を上げるのに時間がかかるし、日本に来てもあまり日本人に話しかけません。

 

あと海外から来た人はAIを使って文章を書いたり翻訳することが多く、よく業務中にスマホを触ってしまいます。AIを使った文章は、難しく堅い単語が出てくるのですぐに本人が考えた文章じゃないとわかりますし、これでは日本語は上手くなりません。

 

会社にもよりますが、スマホを触っていたら本当に業務に関することを調べているのか、サボっているのかわからないので不信感を持たれてしまいます。スマホ使用については、客観的にどう見えるのかを説明しましょう。

 

セキュリティ関係でスマホを持ち込めない現場もあるので、調べ物は自分のPCでするよう最初から忠告しておくと良いですね。

 

「グローバルな事業展開を一緒に作っていきたい」

外国人の社員が一人前に成長すれば、例えば自国への架け橋になってくれるかもしれません。日本の仕事を自国へ指示したり、逆に自国の仕事を日本に紹介したり。

 

こういったグローバルな事業展開ができれば会社の未来が広がります。その為には彼らの「自分たちで良くしていこう」という気持ちが大事です。来日した人は最初は控えめで受け身です。

 

アジア圏から来た人は自分から発言することもあまりできません。今までそういう機会が無かったからです。最初に日本に来た時の気持ちを忘れずに、希望を持ってどんどん先へ進んでほしいですね。

 

お互いの文化を知れるイベント開催

例えばベトナム料理はパクチーなど、色々なハーブを入れた料理が有名ですよね。ミャンマー料理は辛いものが多く、彼らにとって日本の食べ物は甘いらしいです。

 

こういった文化の違いを知るイベントを社内で開催すれば、喋るキッカケになってより相手を知ることができます。座る姿勢が悪いと思っていたら、「ミャンマーでは椅子の上で胡坐をかくのは普通のこと」という驚きの事実が知れるかもしれません。(日本では行儀が悪いことだと伝えましょう)

 

まとめ

今回は実際に30人以上の外国人社員がいる弊社の、日本人社員目線での意見をご紹介しました。

 

弊社では外国人の採用は2016年から行っていて、うまくいかなかった経験もして、様々な注意点も学びましたが、今後の会社の発展を考えた時にはグローバルで優秀な人材と多様性を持って働くことが大切だと考え、採用活動を行ってきました。

 

外国人でも日本人でも同じではありますが、採用する際は「どんなことができて」「どういう考えを持っていて」「今後何をしていきたいのか」をしっかり確認する必要があります。そして、長く働いてもらうためには社員間のコミュニケーションを円滑にすることと、会社のビジョンと社員の思い描くキャリアが重なっているかも大切なポイントだと思います。

 

これから外国人を採用しようと考えている企業の担当者様など、弊社がお力になれそうなことがありましたらお気軽にお問い合わせください。

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