
コラム
外国人から見た日本の土木会社

弊社は外国人を正社員として雇用して約10年になりました。最初は1人、3人と少人数でしたが、今では社内の半数が外国人で、他社への外国人派遣も行っています。今回は弊社の外国人社員から見た日本についてご紹介します。
※土木の大学を卒業し、日本で10年以上働くことを前提に採用しています。
外国人目線:日本を選んだ理由

弊社ではアジア圏から色々な人達を採用してきました。世界の様々な国の中から日本を選んだ理由はなんでしょう。彼らにその理由を聞いてみたので、ご紹介します。
「素晴らしい技術と文化を持つ国だから」
日本は地震が多い災害大国として有名ですが、その分耐震技術は世界トップレベルです。水害対策への歴史も長いですし、他にも道路や鉄道の設計・施工技術も高く、「日本の高度な技術を学びたい」と来日する外国人も多いです。
最近では今まで地震が無かった国でも地震が起こっており、耐震技術への関心が高まっています。
あとよく聞くのは、アニメや文化が好きで日本を選んだ人も多いですね。アニメも勿論クリエイター達の高度な技術のおかげで世界中の人気を集めていますし、日本人の丁寧でどんなことにも敬意や感謝を忘れない考え方が、どの分野にも表れています。
外国人目線:来日後の将来設計

では、日本に憧れて来日した彼らは、どんな目標や未来を目指しているのでしょうか。
※弊社では海外から採用する場合、「10年以上日本で働きたい人」を採用しております。
「資格を取ってキャリアアップしたい」
建築・土木の弊社に入社した外国人社員からは、「施工管理技士の資格を取りたい」という意見が多かったです。
将来自国に帰って、日本で学んだ高度な技術を活かしたい人が多く、将来への大きな目標が決まっていて素晴らしいですね。
ミャンマー人は、現場に出て施工管理の仕事がしたい人が多いようです。実際に2級施工管理技士の資格を取ったミャンマー人の社員がおり、彼女は大人しい性格ながらも積極的に行動し、日本語の上達も早かったです。
日本が好きな人がほとんどですから、将来日本と自国との架け橋になって仕事をしたいと言う社員もいましたし、家族を残して来日してきた人も多く、近い将来家族を日本に呼んで一緒に暮らしたいと希望している人もいます。
外国人目線:日本で働いて気づいたこと

自国で日本語や日本人について勉強してから来日したものの、実際に日本の会社で働くとたくさんの気づきや誤算があったようです。
「正確で責任感がある」
日本で働くと自国との考え方の違いに戸惑うそうですが、皆日本人の真面目さに感心しています。細かい所まで気を配り、相手(客先)のことを考えて行動する。
だから日本の製品や技術は凄いのだと納得できるでしょう。
しかし真面目な分、逆に冷たい印象を受けたり、職場の硬い雰囲気につまらなさを感じたりする時もあるようです。
「思っていたより日本語が難しい」
「日常会話ができれば問題無い」と思って来日すると、専門用語やビジネス用の日本語に苦戦します。契約や役所の手続きの書類も、難しい単語や言い回しだらけです。
そして日本人がよくやる「空気を読む」のも難しいですね。言葉にはしないけれど察して行動するなど、長年日本人と接していないとわからない感覚です。
外国人目線:来日して良かったこと

日本に希望を持って来日した彼らが、来て良かったと感じることはなんでしょうか。
「生活面でも考え方や価値観が良い方向に成長している」
例えば、ベトナムでは道路に大量のバイクが走っており、横断歩道を渡るのに一苦労です。慣れていなければ事故も起こるでしょう。
しかし日本では鉄道などの公共交通機関が発達しており、様々な移動手段が使えます。そして皆信号を守り、横断歩道も安全に渡れます。
掃除文化も他国とは違う考え方ですよね。外国では「掃除は掃除員の仕事」と割り切っている所が多いでしょうが、日本では小さい頃から学校で「自分の場所は自分できれいにする」と学んでいるので、ゴミの少ない町が自然と保たれています。
弊社も毎週掃除の時間を設けており、その時間は先輩社員とのコミュニケーションの時間にもなっています。
あと日本人は「他の人に迷惑をかけない」教育をしてきました。電車の中では物を食べず、静かにする。遅刻しそうな時は先に連絡する。そういった「相手の為」の考え方も外国人には新鮮かもしれません。
日本人のルールを守り、良い環境を保とうとする姿勢が、外国人に良い影響を与えていると考えると誇らしいですね。
外国人目線:来日して困ったこと

では来日して困ったこともご紹介します。コミュニケーションについての意見が多かったです。
「意見を出したり、説明したりするのが難しい」
やはり困るのは日本語で、仕事で使う専門用語や状況を上手く文章にするのが難しいです。文字で文章にするのは問題無いのですが、AIや翻訳機無しで口だけで伝えるのは皆苦戦しています。
わからない単語が多すぎて質問できない人もいるので、指示側は相手の表情をよく見ましょう。わからない単語が出てくると「?」の顔になります。時間はかかりますが、「今言ったこの単語の意味は知っている?」「この指示は何をいつまでにすればいいか、理解できた?」と相手がどこまで理解できたかを確認しながら進めていきましょう。
指示を出した後も、数時間ごとに様子を見て、問題無く進んでいるか確認してあげてください。些細なことに悩んで手が止まっている場合もあります。
外国人目線:問題への対策

彼らは日本に来て色々な問題に直面していますが、その対策について聞きました。
「メモをする、勉強する」
日本語が難しいという問題に対し、「日本の番組を見る」「メモして調べる」などの回答が多かったです。
中でも積極的に日本人と会話してコミュニケーションを取ろうとする人は強いです。こういう人はすぐに日本語が上手になりましたし、実際にN1に合格している人は日本人との会話を大事にしています。
来日したばかりでは日本人に話しかけるのは怖いでしょうから、「涼しくなってきたね。行きたい場所はあるの?」「最近風邪が流行っているね。風邪を引いた時、どこの病院に行けばいいかわかる?」などと話しかけてあげてください。
相手との距離が縮まれば、言葉が拙くとも会話しようと思えてきます。
外国人目線:日本に対しての要望

日本人や日本の仕組みについての要望もあったのでご紹介します。
「会議を短くしてほしい」
日本人は始まる時間には厳しいですが、終わる時間はあまり守りません。「会議が長すぎる」という意見がありました。それに外国人社員にいきなり質問をしたり、意見を求めたりしてもあまり良い結果にはならないでしょう。
事前に資料を配って準備をさせてから会議を始めた方が、より良く意味のある会議になります。
指示を出すときも同じで、長くややこしい指示を出すなら、事前に資料や図面を渡して先に確認してもらうと良いですね。
「マニュアルやチェックリストがほしい」
すぐに指示を出して作業を進めたい気持ちを抑えて、一旦指示書を作成してください。どの図面を使う、どの手順で作る、いつまでにどこに提出するなど、大事な項目は文字と口の両方で伝えましょう。
手間はかかりますが、ミスは格段に減ります。口頭指示を曖昧に聞き覚えるより、文字でハッキリ見えた方が正確です。
指示書を残しておけば、「日本語がわからなかった」という言い訳も起こりませんし、「将来こんな仕事をする」と理解できるので、新人への予習にも使えます。
まとめ
今回は弊社の外国人社員にとったアンケート結果をご紹介しました。短く説明する、指示書を作るなど、日本人にも有効なものもたくさんありました。外国人に教えるのが上手い人は、きっと日本人への教育も上手いはずです。教育者の訓練として外国人を相手にするのもいいかもしれません。
指示を出す側からすると、日本語力の違いだけで、日本人も外国人もあまり変わりません。どの国から来ても同じで、素直で真面目な人は伸びるし、逆に楽に済ませようとする人は伸びません。
一緒に仕事をすればお互いへの問題や不満も出てくるでしょうが、「元々価値観が違う」「どうすればお互い納得できるか」を考慮しつつWin-Winの関係を築いていきたいです。