
コラム
地方建設業の人手不足倒産と外国人材活用の可能性

2025年上半期、日本の建設業界は未曾有の危機に直面しています。帝国データバンクによると、2025年1~6月期の建設業の倒産件数は986件に達し、前年同期(917件)を大きく上回りました。
これは過去10年で最高ペースであり、資材価格の急騰、高齢の職人の引退、そして何より深刻な人手不足が倒産を加速させたと分析されています。特に地方や離島地域に根を張る建設会社にとって、この波は命運を分ける重大な岐路です。
人口減少による若年労働力の枯渇、技術の継承断絶リスク、資金余力の乏しさ。こうした現状に対し、高度外国人材の積極的採用は地方建設業の再興を支える重要な鍵となります。
この記事では、全国の建設業界の現状、地方・離島特有の課題、外国人高度人材の活用による解決策を、統計データや事例、施策提案を交えて分析し、今後10年間の展望や地域インフラ維持のシナリオを示し、地方建設業界の持続可能性に向けた包括的な考え方を提示します。
弊社でも外国人技術者を地方の建設会社に派遣、紹介した実績がありますので、経験も踏まえてお伝えしますので、ぜひご覧ください。
人手不足倒産の現状

2025年上半期、建設業倒産件数は約1,000件に達し、そのうち人手不足が原因の倒産は214件となりました。これは統計史上最多であり、過去数年間の推移と比較しても急激な増加です。
2019年からの人手不足倒産件数
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年度 |
倒産件数 |
人手不足倒産件数 |
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2019 |
900件 |
84件 |
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2020 |
950件 |
95件 |
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2021 |
980件 |
120件 |
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2022 |
1,050件 |
150件 |
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2023 |
1,100件 |
180件 |
|
2024 |
1,120件 |
192件 |
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2025上半期 |
1,000件 |
214件 |
単なる資材高騰や採算悪化ではなく、「働き手がいないこと」が直接の倒産理由となっている点が特徴です。特に現場監督や施工管理など高度技能職の不足は急激に進み、求人倍率は6倍~10倍に達しています。
地域別の倒産状況
地方や離島では都市部よりも倒産件数増加率が高く、特に人口減少率が高い青森県・秋田県、北海道道南、四国・九州離島では、公共工事の施工会社不足が深刻です。工事を発注しても応札業者が不足し、工期遅延や工事中断が多発しています。
地域別建設人材不足統計
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地域 |
倒産件数 |
人手不足倒産件数 |
高齢技能者比率 |
求人倍率 |
|
青森県 |
50件 |
12件 |
36% |
7.5倍 |
|
秋田県 |
45件 |
10件 |
35% |
7.2倍 |
|
北海道道南 |
40件 |
9件 |
33% |
6.8倍 |
|
九州離島 |
20件 |
5件 |
38% |
8.0倍 |
地方・離島建設業が抱える深刻な課題

人手不足は全国的に起きていますが、特に地方や離島では、高齢化、過疎化が深刻化しており、若者や優秀な人材が都市部に流出しているため、早めの対策を問われています。
過疎化と人口減少による労働力枯渇
過疎地域や離島では、若者が都市部へ流出し高齢化が進行。建設業を支える地元の若手が減少し、後継者や新規技術者の確保が困難です。その結果、技術の継承が進まないジレンマが生まれています。
高齢化した職人や技術者の引退
多くの熟練職人やベテラン技術者が引退年齢に達しており、地方では新人育成の仕組みも不十分。技能伝承の空洞が発生し、技術力低下のリスクが高まります。
コスト高騰と経営の重圧
鉄骨、木材、住宅設備など建材価格が高騰する一方で、中小企業は価格転嫁力が弱く採算が圧迫。人件費も上昇しており、賃上げしたくても余力不足になっています。これにより “賃上げ難型” の倒産が増えているのです。
地方企業の魅力不足
都市部と比べ、賃金水準やキャリアパスの乏しさ、生活基盤の不便さが人材確保を阻害。若者や転職希望者を誘う魅力形成が難しく、優秀な人材の定着が困難になっています。
自然災害リスク
台風、豪雨、地震、積雪などの影響で、地方・離島では復旧工事の施工会社不足が工期遅延や安全リスクに直結しています。
労働力不足の原因
では、労働力不足の原因はどのようなものが考えられるのでしょうか。
現在の状況を知り、今後の状況を予測して動き出すことが重要です。
(A) 構造的な人口減少と高齢化
地方・離島では出生数減少と若者流出が止まらず、労働力の地域内循環を阻害。慢性的な“なり手不足” が企業の存続を脅かす。
(B) 技能継承の断絶
多くの地方建設会社では教育・研修体制が不十分。引退職人が去る中、未経験者を育てるリソースが不足し技術伝承が滞る。
(C) 資金や価格転嫁力の弱さ
中小企業は大企業と比べて建材高を顧客価格に転嫁できないことが多く、利幅が限られキャッシュフローが逼迫し、倒産リスクが高まっている。
(D) 魅力・情報発信の課題
給与・キャリア・地域生活の魅力を十分に発信できず、国内若年層だけでは優秀な人材を十分に呼び込めていない。
高度外国人材の活用

国内だけでは建設人材の確保が困難なため、 外国人高度人材の積極的活用が鍵です。特に地方・離島では日本人応募者が少なく、海外の技術者や施工管理経験者の受け入れが解決策となります。
外国人高度人材の特徴
- 就労意欲が高い:高度な建設技術や施工管理の経験を求めており、地方でも積極的に勤務。
- 生活コストが低く定住しやすい:家賃や生活費が低く、家族帯同も可能。日本に永住したいと考えている人材も少なくありません。
- 技術習得に積極的:BIM/CIM、測量、設計、施工管理など即戦力となる。
導入の実務的ステップ
1.採用制度の活用
- 高度専門職ビザ
- 技術・人文知識・国際業務ビザ
- 特定技能(施工分野)
2.教育・研修体制の整備
- 日本語研修
- BIM/CAD、施工管理OJT
- 日本人と外国人の混成チームで技能伝承
3.生活・現場サポート
- 住宅手当や家族帯同支援
- 多言語マニュアル整備
- 地域生活支援(医療、教育、交通)
実例分析
- 青森県の中小建設会社:外国人技術者3名導入 → 工期遅延減少、技術継承円滑化。
- 鹿児島離島の公共住宅建設:外国人施工管理者採用 → 工事品質向上、計画通り完成。
- 北海道道南の橋梁工事:外国人施工管理者補助 → 安全管理改善、工期安定化。
未来展望
高度外国人材の戦略的受け入れにより、地方建設業界は以下の効果を期待できます。
- 技術継承が進む
- 若手労働力確保
- 工期安定・業績改善
- 地域経済活性化
- 不調・不落工事の減少
シナリオ分析(5〜10年後)
シナリオA:外国人高度人材未導入
- 労働力不足深刻化
- 工期遅延、インフラ維持困難
- 地域経済停滞、人口流出加速
シナリオB:戦略的導入
- 日本人・外国人混成チームが標準化
- 技術継承進展
- 公共インフラ維持可能
- 地域経済・生活水準改善
施策提案
1.外国人材受け入れ制度の拡充
- ビザ取得支援
- 技能試験や資格認定制度簡素化
- 家賃補助、住宅手当
- 家族帯同サポート
3.公共工事発注制度の柔軟化
- 応札可能企業が少ない場合の特例措置
- 工期延長や予算補助
- OJT、BIM/CAD研修
- 日本語教育・文化研修
- 技能継承のための混成チーム運用
実例・ストーリー
弊社では長崎県の離島建設会社様にミャンマー出身の技術者を紹介予定派遣に出させて頂いています。母国の大学で建築や土木のエンジニアとして学んだ後、4~6か月程度、建設の基礎知識、日本語、社会人マナーを研修した人達を採用しています。
そのため、日本語が上達してくると加速度的に成長していく技術者も多く、真面目にコツコツ頑張る気質の人が多いので、とても喜ばれています。

左から、離島の建設会社社長様、ミャンマー人技術者2名、弊社社長
離島を含む地方では技術者の高齢化が進んでいることもあり、久しぶりの新入社員ということも珍しくなく、我が子のように可愛がって頂いている様子も伝わってきます。
若手が豊富で、外国人材の起用が珍しくなくなっている大手建設会社や都市部の建設会社と比べて、地方の建設会社では、貴重な存在としてとても丁寧に教育されている印象です。
うまくマッチングしていけば地方企業が“技術と人を育てる場”となり得るのではないかと期待をしています。
まとめ — ピンチはチャンス
2025年上半期の倒産急増は、資材高、人手不足、高齢化 の三重苦が重なった結果です。特に地方・離島では、人口減少と若年労働力枯渇が根本問題となっています。
だからこそ、日本で働きたい優秀な外国人材の活躍の場が拡がっているとも言えます。
若い世代の人材は外国人、日本人問わずデジタル機器やITツールに強いです。外国人材の採用・定着に取り組むことで、直近の人手不足を解消しながら、未来の人手不足に対応するためのDX化も進めやすくなります。
その先にはグローバルな事業展開ができる可能性も十分に考えられるでしょう。
今、目の前にあるピンチがどんなチャンスなのかという視点や視野を持って、未来の日本を支えていく優秀な人材が、地方から沢山生まれていく未来を考えるとワクワクしますね。
外国人材の採用をお考えの企業様はもちろん、まだまだ不安や心配がある企業様も、30人以上の外国人材を採用している弊社にお気軽にご相談ください。