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2024-2026入管法改正の全貌:企業が迫られる外国人事戦略

2024-2026入管法改正の全貌:企業が迫られる外国人事戦略

外国人材を30人ほど雇用している弊社にとっては今回の入管法改正はとても影響があります。そこで、自分達の認識のすり合わせも兼ねてコラムの記事にしてみました。これから外国人材の雇用を考えている企業さんも含め、参考になればと思います。

日本で深刻化する少子高齢化と労働力不足を背景に、外国人材政策において歴史的な転換期を迎えています。2024年から2026年にかけて相次いで可決・施行されている「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の体系的な改正は、単なる行政手続き上の変更にとどまりません。これは実質的に、日本政府が「一時的な労働力の受け入れ」から「長期的に定着する優秀な人材の確保」へと舵を切り、同時に社会安全性を担保するために管理を厳格化するという、包括的な国家戦略の再構築を意味しています。

外国人材を雇用する日本企業や送り出し機関、そして外国人労働者本人にとっても、今回の改正の本質を深く理解することは、今後の人事戦略やキャリア設計において死活問題です。本コラムでは、新入管法における5つの核心的な変更点を深く分析し、今後の重要な動向を予測・解説します。

 

第1部:入管法改正における5つの核心的な変更点


2024
年から2026年にかけて順次施行される入管法改正は、外国人材の受け入れと管理のあり方を根本から覆す歴史的な転換点です。

対象となる法規や運用変更は多岐にわたりますが、企業の人事・労務担当者が実務上押さえるべき要点は大きく5つに集約されます。今回の改正は「制度の抜本的刷新」「義務履行とコンプライアンスの厳格化」「行政手続きのデジタル化(DX)」の3つの軸で連動しています。

各項目の詳細な解説に入る前に、まずは今回の法改正における5大核心ポイントの全体像と、企業への直接的な影響を下表でご確認ください。

 

変更項目

主な改正内容

企業への直接的影響・リスク

1. 育成就労の創設

技能実習の廃止、要件付き転籍の自由化

処遇・環境が悪い企業からの人材流出リスク。

2. 永住許可の取消要件

税金・社保の未納・滞納による永住権剥奪

外国人社員の納税・保険納付指導の企業責任。

3. 手数料の引き上げ

2026年10月施行、期間別累進制とオンライン優遇

ビザ関連費用を会社負担している場合のコスト増加。

4. 特定在留カード

在留カードとマイナンバーカードの一体化

資格外活動・脱税等の即時自動検知(コンプライアンス圧力)。

5. 技人国ビザの厳格化

職務関連性・実効的な言語能力の審査厳格化

単純労働への偽装配置禁止、理由書作成の精緻化。

 

1. 技能実習制度の廃止と「育成就労制度」の創設

30年以上にわたり運用されてきた「技能実習制度」は、転籍(転職)の制限による人権侵害の懸念、不当な低賃金、国際貢献という名目と労働力確保という実態の乖離などから、国際社会や国内から多くの批判を浴びてきました。これが正式に廃止され、新たに「育成就労制度」がスタートします。

  • 変更の本質: 従来の「国際貢献・技術移転」という名目を排し、「日本の労働力不足を解消するために、外国人を育成し確保する」という目的を正面から認めました。
  • 最大のポイント(転籍制限の緩和): これは革命的な変化です。新制度では、一定の要件(一定期間の勤務、N5以上の日本語能力、基本的な技能試験の合格など)を満たせば、同一職種内での自己都合による転籍(会社変更)が合法的に認められるようになります。
  • 分析と考察:
    • 外国人労働者への影響: 劣悪な労働環境やハラスメントを行う企業に縛られることがなくなります。より良い条件を求め、日本語やスキルの向上へのモチベーションが高まるでしょう。
    • 企業への影響: まさに「諸刃の剣」です。待遇が悪い、労働環境が過酷、またはマネジメントに問題がある企業は、人材が他社へ流出するリスクに直面します。一方で、ホワイトな職場環境や明確なキャリアパスを持つ企業にとっては、優秀な人材を引きつけるチャンスです。企業は「管理・コントロール」から「惹きつけ・定着」へと、マインドセットを根底から変える必要があるでしょう。

 

比較項目

従来の「技能実習制度」

新設の「育成就労制度」

企業への影響・留意点

制度の主目的

国際貢献・技術移転(名目と実態の乖離)

日本の労働力確保と人材育成(本音を公認)

労働力としての受け入れを正面から認めた運用へ転換。

転籍(転職)の可否

原則不可(人権侵害や失踪の温床)

要件付きで自己都合転籍を容認(制限緩和)

劣悪な環境の企業からは人材が流出。職場改善が急務。

転籍の基本要件

やむを得ない事情(倒産・ハラスメント等)のみ

一定期間の勤務、日本語N5以上、技能試験合格等

人材定着のためのキャリア支援と評価制度が必須。

将来のキャリアパス

原則帰国(最長5年で修了)

「特定技能」への移行が前提(長期在留・永住)

単期労働力ではなく、幹部候補・熟練技術者として育成可能。

企業の求められる姿勢

「管理・囲い込み」

「惹きつけ・定着・選ばれる職場づくり」

待遇、マネジメント、生活支援の質が採用競争力に直結。

 

2. 管理権限の強化と「永住許可」の取消要件の追加

受け入れ口(実質的な単純労働分野)を広げる一方で、日本政府は定住ルートの最上位である「永住権(永住者の在留資格)」に対して、極めて厳しい姿勢を打ち出しています。

  • 変更の本質: 入管法の改正により、永住者が公的義務(税金、健康保険、厚生年金などの社会保険料)を故意に怠ったり、滞納したりした場合、あるいは特定の刑罰・行政罰を受けた場合に、出入国在留管理庁が永住許可を取り消すことができる仕組みが導入されます。
  • 分析と考察:
    • 従来、永住権は一度取得すれば(重大な犯罪による懲役刑等を除き)取り消されることはほぼなく、日本国民とほぼ同等の権利が得られました。今回の改正は、これを常時監視・管理するメカニズムへと変更するものです。
    • この背景には、永住者が増加する一方で、一部で税金や保険料の未納・滞納が問題視され、社会保障制度の財政負担や国民の不公平感を解消しようとする世論・政治的要請があります。
    • 結論: 在留外国人にとって「永住はゴール(不変の権利)ではない」という強い意識改革が必要です。企業としても、外国人社員が長期的な権利を守れるよう、税金や保険の手続きを正しく案内・サポートする責任が生じます。

 

3. 在留手続きに関わる行政手数料の大幅な引き上げ(2026年10月1日施行)

2026年秋より、在留資格の申請・更新・変更に関わる手数料が大幅に引き上げられます。注目すべきは、在留期間の長さや申請方法(オンラインか紙か)に応じた手数料の差別化です。

  • 変更の本質: 特に永住許可申請の手数料が大幅に引き上げられるほか、通常の在留資格(技術・人文知識・国際業務や特定技能など)の更新費用も、一律料金ではなく「許可される在留期間が長いほど高額になる」累進制が導入されます。ただし、政府が進める「オンライン申請」を利用する場合は、手数料が割引(優遇)されます。
  • 分析と考察:
    • 目的: 外国人在留者が過去最高を記録する中、入国管理システムの運用コスト増加を補うとともに、行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を強力に推進し、書面からオンライン申請への移行を義務付ける(インセンティブを与える)狙いがあります。
    • 企業の負担: 外国人社員のビザ関連費用を会社が全額または一部負担している企業、特に多くの外国人材を抱える企業にとっては、2026年以降の運用コストにおいて無視できないコスト増要因となります。

申請種別 / 区分

改定前の特徴

2026年10月以降の新体系

企業が取るべき対策

永住許可申請

一律の手数料体系

大幅な引き上げ(申請時の負担増)

永住要件の厳格化とともに申請計画の早期策定が必要。

通常在留資格の更新

在留期間に関わらず一律料金

許可される期間が長いほど高額(累進制)

長期更新時の会社負担コスト増を事前に予算化。

申請方法の格差

紙窓口・オンライン同等

オンライン申請の割引・優遇措置

行政手続きのDX化(オンライン申請への移行)を推進。

 

4. 在留カードとマイナンバーカードの一体化:「特定在留カード」の誕生

国家データのワンストップ化と行政効率化のため、従来の在留カードを廃止し、マイナンバーカードと一体化させた「特定在留カード」へと移行します。

  • 変更点: 新しいカードのICチップ内には、在留資格情報に加え、個人番号、納税・社会保険・年金の支払い履歴、リンクされた銀行口座情報などが一元的に集約されます。
  • 分析と考察:
    • 利便性の向上: 外国人住民が役所での手続きや引っ越し、転職を行う際、面倒な書類提出の手間が大幅に削減されます。
    • 圧倒的な透明性(政府の目): これは実質的に、政府による「強力な監視の目」です。一体化によりデータがリアルタイムで突合されるため、留学生の資格外活動(週28時間以上のオーバーワーク)、脱税、不法就労、実態と異なるビザの不正利用などは、システムによって自動的かつ瞬時に検知されるようになります。

 

5. 「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザの審査厳格化

いわゆる「高度人材(大卒・専門学校卒向け)」の代表格である「技人国」ビザですが、オフィスワーク(通訳やエンジニアなど)の名目で入国しながら、実際には工場や飲食店で単純労働に従事させる「偽装エンジニア」などの不正事例が後を絶ちません。、これを踏まえて、出入国在留管理庁は審査のハードルを一段と引き上げています。

  • 変更の本質: 学校での専攻内容と、企業における実際の業務内容の「職務関連性」の立証が非常に厳しくなりました。また、単に専門資格があることだけでなく、職務を遂行する上で十分な「実効的な言語能力(JLPTなどの日本語試験、または国際的な英語試験のスコア)」の提示を求めるケースが増えています。
  • 分析と考察:
    • この変化は、「高度人材」という在留資格の本来の定義と質を担保するためのものです。高度外国人材を採用する企業は、企業の財務状況だけでなく、「なぜその人材が必要なのか」「どのようなキャリアパスを歩ませるのか」を精緻に説明した理由書を準備しなければ、ビザの不交付(不許可)リスクが高まります。

 

第2部:今後の予測される動向(今後の動向)と企業が取るべき戦略


一連の法改正に基づき、現在から2028年までの日本の外国人管理体制は、以下の3つの大きなトレンドを中心に動くと予測されます。

 

1. 「実地検査の強化」の潮流 — 企業への監査圧力の増大

出入国在留管理庁は大幅な予算増額を獲得し、実地審査(立ち入り検査)を担当する専門官を大幅に増員しています。

入管の出方予測:

これまでの「書面審査中心」から、工場、建築現場、オフィスの「事前通告なしの抜き打ち監査」が強化される可能性があります。入管の検査官は、実際のシフト表、賃金台帳、業務実態を精査し、外国人社員がビザの範囲外の仕事をしていないかを直接ヒアリングして確認するでしょう。

企業へのアドバイス:

企業は外国人従業員の雇用関連書類を完全にコンプライアンス(法令順守)に沿った形で管理が必要です。雇用契約書、給与明細、実際の業務指示が、入管に提出した申請書と100%一致しているか確認してください。ずさんな管理を行っている企業は「ブラックリスト」に載り、今後の外国人採用枠の一時停止などの重いペナルティを科されるリスクがあります。

 

2. 「JESTA(日本版ESTA)」の導入による水際対策の強化

観光ビザ(査証免除)を利用して短期滞在で入国し、そのまま失踪して不法就労するケースもあります。これに対応するための精度が事前渡航情報システム「JESTA」です。日本政府は2028年までの全面運用を目指して構築を進めています。

運用の仕組み:

ビザ免除国からの渡航者は、日本行きの飛行機に乗る前に、オンラインで個人情報、渡航目的、滞在スケジュール、財産証明などを申請しなければなりません。入管のAIシステムがリスクをスクリーニングし、事前に渡航許可を出します。

マクロ的影響:

この動向は、日本が「水際(空港での入国審査)の手前」でフィルタリングを行う姿勢を示すものです。これにより、不法就労目的の流入は大幅に抑制され、日本での就労は「正規のルート」を通過した人材に完全に限定されることになります。

 

3. 外国人労働市場の二極化 — 人材獲得・定着競争の激化

育成就労制度における「転籍(転職)の自由」の容認と、「特定技能2号(家族帯同・永住への道)」への移行ルートの拡大は、労働市場における大移動(地殻変動)を引き起こします。

人材の移動トレンド:

外国人労働者は、最低賃金が低い地方や農業・地方都市の製造業から、賃金水準が高くインフラが整った大都市圏(東京、大阪、名古屋など)、あるいは先進的な人事制度を持つ大手・優良企業へと流出していく傾向が強まります。また、単に給与が高いだけでなく、外国人向けの生活支援(生活オリエンテーションやメンタルケアなど)が充実している企業に人気が集中するでしょう。

中小企業(SMEs)の試練:

地方の中小企業は、これまでの「外国人を安価な労働力として扱う」という意識を捨てなければ、採用どころか現在いる人材すら維持できなくなります。外国人を日本人と同等の「対等なキャリアパートナー」として迎える姿勢が不可欠です。

 

結論と提言

2024年から2026年にかけての入管法改正が示す日本政府のメッセージは極めて明確です。それは、「ルールを守り、しっかり働く優秀な人材は大歓迎するが、ルールを破る者、義務を果たさない者は厳しく排除する」というものです。

企業にとって、この過渡期は自社の外国人事戦略を総点検する最大のチャンスと言えます。新時代に適応し、持続的な成長を遂げるために、今すぐ以下の3つの戦略的アクションを実行することをお勧めします。

  1. 管理の標準化とデジタル化(DX): 雇用管理やビザ更新の手続きをデジタル化し、オンライン申請に対応できる体制を整えましょう。そうして、新手数料体系の割引恩恵を受けつつ、入管の突発的な立ち入り検査にもいつでも即座に対応できるように備えます。
  2. 労働環境・待遇の抜本的改善: 育成就労から特定技能への移行、さらにその先の永住を見据えた明確な「キャリアパス(昇給・昇進制度)」を構築しましょう。国籍にとらわれず、能力に基づいた公平な評価・報酬制度を導入します。
  3. 多文化共生と生活定着支援の強化: 業務上の日本語教育だけでなく、地域社会へのコミットメント(住居の確保、行政手続き、医療へのアクセスなど)をサポートしましょう。精神的・文化的な安心感こそが、優秀な外国人材が「この会社で長く働きたい」と思う最大の動機(エンゲージメント)となります。

「安価な労働力」として外国人を捉える時代は完全に終わりを告げました。法を破ることなくコンプライアンスを徹底し、従業員一人ひとりの「人間」としての成長を支援する企業だけが、これからの少子化ニッポンにおいて、最強の人材競争力を獲得できるのです。

おわりに

冒頭に書いた通り、弊社では多数の外国出身社員が活躍しています。

彼らにとって入管法の改正は今後の日本での暮らしやキャリアに直結する大きな関心ごとです。

もちろん企業側にも影響は大きいのですが、大切なことは彼らの立場や目線に立って、考えてみることだと思います。

もし自分が家族や友人達と離れ、外国で仕事や生活を始めたとしたら、法律を読み解くことすら難しい中で、どうやって将来に不安を持たずに活躍していけるのか。そして、企業として彼らの安心を守っていくには、親心のような温かい気持ちで彼らに寄り添っていくことがとても大切なのだと思います。

日本の社会を支える一員として日本に来てくれた感謝をもって。

 

<参考サイト>

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