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橋梁点検のやりがい ― 見えない場所で、社会を支える仕事

橋梁点検のやりがい ― 見えない場所で、社会を支える仕事

私たちは日々、何気なく橋を渡っています。しかし、その安全は当たり前に守られているわけではありません。橋梁点検は、夜間作業や交通規制、入念な事前調整など、多くの苦労を伴う仕事です。それでも、自らの点検結果が補修工事へとつながり、人々の暮らしを支えていることを実感できる瞬間があります。今回は、橋梁点検の現場で働く技術者の視点から、この仕事ならではのやりがいと社会に果たす役割についてご紹介します。

社会インフラを守る橋梁点検業務

私たちが毎日何気なく利用している橋。通勤や通学、買い物や旅行など、橋は人やモノを安全に運び、地域と地域をつなぐ重要な社会インフラです。しかし、その橋が安全に使い続けられるのは、定期的な点検と適切な補修が行われているからにほかなりません。日本では道路法に基づき、橋梁は原則5年に1回、近接目視による定期点検を実施することが義務付けられています。

橋梁点検における苦労


橋梁点検という仕事を初めて聞いた方の中には、「橋を歩いて見るだけの仕事では?」と思われるかもしれません。しかし、実際の現場は想像以上に地道で、時には厳しい環境との戦いです。

 

例えば、交通量の多い幹線道路や高速道路の橋を点検する場合、日中に作業を行うことが難しいため、夜間作業になることがほとんどです。日付が変わる頃に現場へ向かい、交通規制が始まるのを待って作業を開始することもあります。冬の深夜は凍えるような寒さの中で、夏は蒸し暑さと蚊に悩まされながら、一つひとつの部材を確認していきます。

 

また、現場に出るまでの準備にも多くの時間がかかります。橋梁点検では、点検車の手配、交通誘導員の確保、道路使用許可の申請、関係機関との調整など、多くの関係者との連携が欠かせません。点検そのものは数時間でも、その裏側には何日もかけた準備があります。

特に交通誘導員の手配は、近年では人手不足の影響もあり、予定通りに確保することが難しいケースもあります。現場は技術だけで成り立っているわけではなく、多くの人の協力によって初めて実施できるものなのです。

 

橋の下に潜り込み、懐中電灯でコンクリートのひび割れを確認する。ハンマーで軽く叩き、コンクリートの剥離や浮きの有無を確かめる。高所作業車のバケットに乗って橋桁の細部を調べる。そうした作業を積み重ね、橋の状態を正確に記録していきます。小さな変状を見逃さないことが、将来の大きな事故を防ぐことにつながります。

 

橋梁点検のやりがい


もちろん、点検をしていると、「本当にこの仕事が社会の役に立っているのだろうか」と考える瞬間がないわけではありません。深夜まで続く作業、点検調書の作成、限られた工期。目の前の仕事に追われていると、自分たちの成果が見えにくくなることもあります。

しかし、そんな思いを吹き飛ばしてくれる瞬間があります。

 

数年前に点検した橋を久しぶりに訪れたときのことです。当時、主桁に腐食が広く見られ、防護柵にはコンクリートの浮きが多数見られました。報告書には損傷の状況と健全性の診断結果をまとめ、補修の必要性について記載しました。その後、しばらくして現地を通りかかると、橋には足場が組まれ、補修工事が行われていたのです。

 

「自分たちが見つけた変状が、確かに次のアクションにつながっている。」

その光景を見たとき、大きな達成感を覚えました。

 

橋梁点検は、点検して終わりではありません。点検結果は道路管理者に引き継がれ、補修設計や工事へとつながり、橋の寿命を延ばしていきます。点検、診断、補修、そして再び点検というメンテナンスサイクルが、社会インフラを支えているのです。

 

私たちが提出した一枚の写真、一つの所見が、10年後、20年後の安全につながるかもしれない。その責任は決して軽いものではありませんが、それだけにやりがいも大きい仕事です。

 

近年は、ドローンやAIを活用した点検支援技術の導入も進み、橋梁点検のあり方も少しずつ変わり始めています。しかし、最終的に橋の状態を判断するのは人の目と経験です。技術が進歩しても、「橋を安全に使ってもらいたい」という思いは変わりません。

 

まとめ

 

橋は黙ってそこにあります。完成したときはニュースになることがあっても、何十年も安全に使われ続けていることが話題になることはほとんどありません。だからこそ、その安全を守る仕事にも、あまりスポットライトは当たりません。

 

それでも、夜の現場でヘルメットをかぶり、ライトに照らされた橋を見上げるたびに思います。「この橋を明日も誰かが安心して渡れるようにしたい」と。

 

橋梁点検は、決して派手な仕事ではありません。夜勤もあります。天候に左右されます。多くの調整業務に追われることもあります。それでも、自分たちの仕事が目に見える形で社会に残り、人々の安全を支えている。その実感を得られることこそ、この仕事の最大のやりがいなのかもしれません。

 

次に橋を渡るとき、ほんの少しだけ、その橋を守っている人たちの存在を思い出していただけたら幸いです。

おまけ


橋梁点検で現場から調査データをもらって図面を作成していると、立体にしたくなる時があります。というわけで、とある橋梁の橋脚をアレンジしてペーパークラフトにしてみました。

→PDFはこちら

下の画像をA3またはA4サイズで印刷し、カッターで切り抜いて組み立てます。上の完成写真を参考にしてください。厚手の紙に印刷するのがよいですが、通常のコピー用紙でも作ることができます。のり付けすると安定します。刃物を使う際にはけがをしないよう気を付けてください。

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