
コラム
外国人技術者の在留資格制度改革:変更点と企業の生き残り戦略

2026年は今までに見ないぐらい在留資格制度についての変更が行われる年となっています。
外国人技術者が多数働く国土工営コンサルタンツにとっても大きな影響があり、対策も含めどのように対応していくか等、書いておきたいと思いますので、参考にして頂けると幸いです。
はじめに:日本の外国人受け入れ政策の大転換
日本の深刻なIT・技術人材不足を受け、政府は外国人技術者の獲得を推進する一方、不正就労や税・社会保険の未納問題に対処するため、2026年から在留資格(ビザ)制度および永住許可要件の抜本的な厳格化を断行しています。本コラムでは、企業の人事労務担当者が把握すべき重要変更点と実務対応をまとめて解説します。
主要タイムライン(時系列)
| 時期(年月日) | 内容・出来事 |
| 2026年1月 | COE(在留資格認定証明書)がリニューアルされ、ファイル容量拡大・XML保存等でデジタル運用が強化。 |
| 2026年3月 | 改正入管法可決。税・社会保険の滞納に対する永住許可取消制度の創設、および手続き手数料引き上げ枠の可決。 |
| 2026年4月15日 | 審査要領改定(対人業務の日本語要件、および派遣形態への審査厳格化の適用開始)。 |
| 2026年7月3日 | 入管庁が「出入国在留管理施行令の一部を改正する政令案」を公表(手数料の段階制値上げ案とオンライン割引の提示)。 |
| 2026年7月25日・8月5日 | 入管庁が「永住許可に関するガイドライン」の改定案を公表(年収要件・年金ベンチマーク・日本語要件の新設)。 |
| 2026年10月1日(予定) | 改定手数料(段階制料金)の施行、および永住許可における「年収要件」の新基準適用開始。 |
| 2027年4月1日(予定) | 永住許可申請における「最長在留期間(5年)要件」の完全義務化、日本語要件・年金受給見込み審査の開始、および改正入管法に基づく「永住資格取消制度」の完全施行。 |
<参考>
-
- 【お知らせ】新しい在留申請オンラインシステムについて(令和8年1月5日):出入国在留管理庁
- 「技術・人文知識・国際業務」の申請に関する添付書類の追加について:グラスルーツ行政書士事務所
- 在留資格「技術・人文知識・国際業務」:出入国在留管理庁
- 出入国管理及び難民認定法施行令の一部を改正する政令案に係る意見募集の結果について:e-Gov パブリックコメント
- 法務大臣閣議後記者会見の概要(令和8年8月5日): 法務省
- 永住許可に関するガイドラインの改定:e-Gov パブリックコメント
- 在留資格のオンライン申請手続:出入国在留管理庁
在留資格別の詳細な変更点・新旧完全比較

①在留資格認定証明書(COE)の手続き刷新
- 【変更前】: 審査完了後、入管から「紙のCOE原本」が届き、企業はそれを国際郵便で現地の本人に郵送。内定から入国まで最短でも3ヶ月以上かかっていました。
- 【変更後】: 入管のオンラインシステムを通じて申請を完結。審査が完了すると、企業のメールアドレスに「デジタルCOE(QRコード付きPDF)」が直接届きます。過去の優良企業(カテゴリー1・2)については、最速2週間〜4週間でのスピード発給が可能となりました。
② 「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)の厳格化
変更点A:対人業務における「日本語能力N2以上(CEFR B2)」の義務化
- 決定日・適用時期: 2026年4月15日以降の申請分より適用。
- 具体的なルール:技術営業、または顧客と直接折衝を行う「対人業務」が含まれる職種において、日本語能力試験(JLPT)N2以上、またはCEFR B2相当の証明資料の提出が原則必須となりました。日本の大学や専門学校を卒業した留学生は免除されます。
変更点B:派遣会社に対する「個別派遣契約書」の提出必須化
- 決定日・適用時期: 2026年4月15日の審査要領改定に伴い適用。
- 具体的なルール: 不正な単純労働への常駐を防止するため、申請時に配属先企業と締結済みの「個別派遣契約書(期間・具体的な高度業務内容・就業場所が明記されたもの)」の提出が完全必須化されました。派遣先が未定の「社内待機状態」での取得や更新は事実上不可能となりました。
変更点C:在留期間(ビザの期限)が「派遣契約の期間」に完全連動
- 決定日・適用時期: 2026年4月15日より順次厳格化。
- 具体的なルール: これまでは会社規模に応じて一律3年や5年が付与されるケースもありましたが、現在は「提出された個別派遣契約書の契約期間」をベースに在留期間が決定されます。派遣契約が「1年間」である場合、ビザの在留期間も「1年」しか付与されず、企業と労働者は毎年更新手続きを行う必要が生じています。
変更点D:各種手続きの「入管手数料(収入印紙代)」の大幅な引き上げ
- 決定日(政令案公表): 2026年7月3日。
- 適用時期: 2026年10月1日以降に受け付ける申請分から実施予定。
- 具体的なルール: 一律6,000円(窓口申請の場合)だった手数料が、付与される「在留期間に応じた段階制」へ移行します。オンライン経由の場合は窓口よりも割引措置が設けられます。
- 改定手数料一覧(案):
| 申請区分・在留期間 | 窓口申請手数料 | オンライン申請手数料 | 備考・特記事項 |
| 在留期間 3ヶ月以下 | 10,000円 | – | – |
| 在留期間 1年 | 33,000円 | 27,000円 | オンライン割引(6,000円増) |
| 在留期間 3年以上5年未満 | 64,000円 | 56,000円 | オンライン割引(8,000円増) |
| 在留期間 5年以上 | 75,000円 | 65,000円 | オンライン割引(10,000円増) |
| 永住許可 | 200,000円 | ※原則受付なし | 旧料金:10,000円(20倍増) |
永住許可(永住権)要件の大幅な厳格化と新旧比較

高度人材や技術者が最終的に目指す「永住者」の資格について、入管庁はガイドラインを刷新し、経済水準と社会的責任の審査を大幅に引き上げました。
変更点A:独立生計要件への「日本人世帯の平均を上回る年収水準」の明記
- 変更前(〜2026年9月): 目安として「年収300万円以上」かつ「公的負担になっていないこと」という抽象的な基準でした。
- 変更後(2026年10月1日適用予定): 「日本人世帯の平均を上回る年収水準の継続」が明記されました。扶養家族がいる場合、一人あたり数万円〜数十万円が上乗せされます。この年収要件は、2026年4月以降に提出されたすべての申請に対して遡及適用される方針です。
変更点B:厚生年金「30年加入水準」のベンチマーク導入
- 変更前(〜2027年3月): 申請直近2年間の年金保険料が「期限通りに支払われているか」が主にチェックされていました。
- 変更後(2027年4月1日適用予定): 将来の十分な年金受給見込みを証明するため、「厚生年金に30年間加入し続けた場合と同等の受給見込み額」に達していることを原則とするベンチマークが導入されます。来日直後の技術者が早期に永住権を取得するハードルが格段に上がります。
変更点C:永住要件への「日本語能力試験N2以上(CEFR B1)」の追加
- 変更前(〜2027年3月): 永住許可の要件に日本語能力の公的な規定はなく、特段の証明書の提出は求められませんでした。
- 変更後(2027年4月1日適用予定): 日本社会への適切な定住と融和を担保するため、永住申請時において日本語能力試験N2以上(CEFR B1相当)の語学力証明、および日本の制度・ルールへの理解度を示す資料の提出が義務化されます。
削除された特例:「最長在留期間(5年)」の完全義務化
- 変更前(〜2027年3月): 当面の間は「3年」の在留期間であっても「最長の在留期間」として扱う特例措置がありました。
- 変更後(2027年4月1日適用予定): 特例措置が完全に廃止されます。原則として「5年」の在留期間を実際に保有している外国人でなければ、永住申請を行うこと自体が不可能となります。派遣形態のエンジニアは契約期間に応じて「1年ビザ」を連発される傾向が強まっているため、極めて致命的な障壁となります。
変更点D:「故意の税・社会保険滞納」による永住許可取消制度の創設
- 決定日・可決: 2024年6月14日に成立した改正入管法に基づく。
- 適用時期(施行日): 2027年4月1日
- 具体的なルール: 既存の永住者も含め、「住民税や所得税の故意の未納・滞納」「国民健康保険・年金の未納」を繰り返した場合、または入管法に定める義務に違反した場合、入管庁の職権によって永住資格を取り消し、期限付きの一般就労ビザへ格下げすることが可能となります。
新旧比較サマリー(一覧表)
|
項目・手続き |
変更前 |
2026年〜2027年の最新運用 |
適用時期(いつから) |
|
対人業務の日本語 |
技術職はJLPT資格の提示は原則任意だった。 |
日本語能力試験N2以上(CEFR B2)の提出が原則義務化。 |
2026年4月15日(実施中) |
|
派遣(Haken)の提出書類 |
雇用契約書や案件見込み書のみで申請可能だった。 |
派遣先との「個別派遣契約書」の提出が完全義務化。 |
2026年4月15日(実施中) |
|
派遣の在留期間(期限) |
カテゴリーに基づき、3年や5年が出やすかった。 |
「派遣契約の期間」に完全連動。1年契約なら1年ビザ。 |
2026年4月15日(実施中) |
|
入管手続き手数料 |
更新・変更は一律6,000円。永住は10,000円。 |
在留期間に応じた段階制(最大7.5万円)。永住は20万円。 |
2026年10月1日(予定) |
|
永住:収入基準 |
目安として年収300万円程度、安定性重視。 |
日本人世帯の平均を上回る年収水準の継続。 |
2026年10月1日(遡及適用) |
|
永住:年金要件 |
直近2年の期限内の支払記録を重視。 |
厚生年金30年加入水準の将来受給見込みを要求。 |
2027年4月1日(予定) |
|
永住:日本語能力 |
公的な言語要件はなし。 |
日本語能力試験N2以上(CEFR B1)が必須化。 |
2027年4月1日(予定) |
|
永住:保有在留期間 |
3年の在留期間でも特例で永住申請が可能だった。 |
特例廃止。「5年」の在留期間保有が申請の絶対条件。 |
2027年4月1日(予定) |
|
永住:資格の取消 |
重大犯罪による強制退去処分を除き、原則取消なし。 |
税金、健康保険、年金の未納・滞納により資格取消・格下げ。 |
2027年4月1日(確定) |
派遣業界への破壊的インパクトと対策
2026年〜2027年の改革で最も深刻な打撃を迫られているのが、外国人エンジニアを客先常駐させる「人材派遣業界」です。新規申請(COE)および更新時に「個別派遣契約書」の提出が必須となり、契約期間が1年であればビザも1年しか出ません。ビザが1年しか出ないということは、外国人技術者は「保有ビザが5年未満」となるため、2027年4月以降は永住申請を行う権利すら剥奪されることを意味します。これは、日本での永住を目標に努力している優秀な外国人社員のモチベーションを著しく低下させ、長期ビザ(5年)を出してくれる自社雇用の一般企業へ大量離職する引き金になりかねません。
企業の人事労務担当者が今すぐ取るべき3つのアクション
- 採用時における「N2以上」の厳格なスクリーニング:
面接時点でJLPT N2の有無、またはそれに準ずる会話力を必須要件とし、手続き時における「日本語能力不足による不許可リスク」を未然に回避する。 - 派遣先企業との「長期個別派遣契約(2年〜3年以上)」の交渉:
外国人社員に1年ビザが連発されるのを防ぎ、将来的な永住申請への道(5年ビザの取得)を閉ざさないために、派遣先企業に対して個別契約をできるだけ長期で締結できるよう事前に交渉・調整を行う。 - 住民税・社会保険の「会社完全天引き(特別徴収)」への移行:
2027年の永住権取消制度の施行に備え、外国人社員の公的義務違反(滞納)を発生させないよう、労務管理を徹底する。
まとめ
2026年〜2027年の改革は、コスト増加や審査厳格化など厳しい現実を突きつけています。しかし、ルールを完璧に遵守し、入管オンライン申請(GbizID連携)による「デジタルCOE超高速入国」や「オンライン手数料割引」を使いこなせる優良企業にとっては、不正を行う競合他社を排除し、優秀な人材を迅速に確保する最大のチャンスとなります。いち早く社内体制をアップデートしていきましょう。
国土工営コンサルタンツでは、大手ゼネコンや建設会社のプロジェクトをサポートするため派遣に出ている外国人社員もいるため、今回の制度変更はとても影響があります。
会社としてできる対策として、上記に示した3つのアクションに加え、外国人社員一人一人のキャリアおよび在留資格~永住許可までの計画を一緒に立てるなど、なるべく社員が安心できるサポートを実施していく予定です。
法制度も含めた様々な変化の中で、事業展開はもちろん、社員の安心をどう作っていくかも企業に求められているような気がします。